関節リウマチ|膠原病⑤
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は関節リウマチについて解説します。
古川福実
高槻赤十字病院
Minimum Essentials
1非化膿性の多発性関節炎である。
2心臓や肺病変、皮下結節(リウマトイド結節)など関節外症状を伴う。
3抗体療法の有効性が高い。
4症状を和らげ進行を抑えることが大切であると理解させる。炎症に対しては十分に安静をとり、関節の変形や拘縮を予防し、関節機能を保つための適切な運動を指導する。
関節リウマチとは
定義・概念
多発性関節炎である。病変が進行すると、関節の変形、強直を生じる。皮膚、肺、心臓、眼、骨などに関節外症状を生じる。
病因・病態
病因は不明である。女性に多い。感染、ホルモンの異常、ストレスなどが誘因となると考えられている。自己抗体であるリウマトイド因子(RF)からなる免疫複合体が関節の滑液中や滑膜に沈着して炎症を生じる。関節外症状も同様である。
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診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
関節症状
朝のこわばりや多発性、左右対称性、持続性の関節炎を認める。関節炎の好発部位は近位指節関節と中手指節関節で、次第に大関節も侵される。晩期にはボタン穴変形、スワンネック変形、尺側偏位、外反母趾などの関節の変形を認める(図1)。
関節外症状
約25%に皮下結節(リウマトイド結節)が、機械的圧力のかかる部位(肘頭、前腕伸側、アキレス腱部、後頭部など)を中心にみられる。また、皮膚潰瘍や指趾梗塞、紫斑、リベド(網状皮斑)などを認める。
全身の血管系に炎症を生じたときは、悪性関節リウマチとよばれ予後不良である。
そのほか、胸膜炎、間質性肺炎、ぶどう膜炎、心囊炎、末梢神経障害などを認める。
全身症状として、疲れやすい、微熱、体重減少、食思不振などを認める。
検査
CRP陽性、血沈亢進、白血球増多を認める。患者の多くがRFで高値を示し、抗CCP抗体は必須のマーカーである。
抗環状シトルリン化ペプチド。関節リウマチに特異的に検出される自己抗体で、早期診断の切り札となる。抗CCP抗体が高値の患者では、骨破壊が進行する危険性が高い。
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治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
①炎症所見の強いときは疼痛の管理、安静が必要である。疼痛軽減後は関節機能維持のため、積極的に運動療法を行う。
②活動性が強い、あるいは関節外症状を有する場合は、NSAIDs、ステロイド薬、免疫抑制薬などが投与される。TNFα、IL-6レセプターなどに対する抗体療法の有効性が高い。
③徐々に手指関節の変形、拘縮が進行するため、日常生活動作(activities of daily living:ADL)が著しく障害される。患者のADLの障害度を考慮した理学療法、作業療法、ADL訓練などのリハビリテーションが必要である。
合併症とその治療法
関節症状や多臓器症状が出現し、また、全身症状として疲れやすさ、脱力感、体重減少、食欲低下がみられる。個々の症状に対応して治療を行う。
治療経過・期間の見通しと予後
個別の患者の病態による。
看護の役割
治療における看護
関節リウマチの治療は、薬を使い、症状を和らげ、進行を抑えることが大切であると理解させる。また、疼痛の訴えなどが多くなるが、患者の訴えを尊重するよう心がける。
炎症に対しては十分に安静をとり、関節の変形や拘縮を予防するため、適切な運動を行い関節機能を維持できるよう援助する。
フォローアップ
炎症に対しては十分な安静を保たせる。疼痛に対しては個々の患者で鎮痛効果をよく観察し、最適な薬を見つける。
疼痛が軽減すれば、機能障害の程度を把握し、機能再建のためのリハビリを行う。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂