脂漏性皮膚炎|湿疹、皮膚炎⑤
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は脂漏性皮膚炎について解説します。
白濱茂穂
聖隷三方原病院皮膚科部長
Minimum Essentials
1皮脂腺の豊富な脂漏部位や間擦部に好発する、慢性の皮膚炎である。常在真菌のマラセチアが病因の1つ。
2乳児型と成人型に大別される。
3治療は入浴、洗髪による皮膚の清潔、抗真菌薬やステロイド外用剤の塗布。
4乳児型は1歳ぐらいまでに軽快するが、成人型は軽快と増悪を繰り返す。
脂漏性皮膚炎とは
定義・概念
皮脂の分泌が盛んな脂漏部位(頭部、毛髪の生え際、鼻の周り、胸、背中など)に好発する、カサカサした鱗屑や紅斑、小丘疹を主体とする湿疹である。
原因・病態
新生児〜乳児期にみられる乳児型と、思春期以降にみられる成人型に分かれる。皮脂の成分、分泌の変化や発汗、ビタミン代謝などが関与する。さらに成人の場合、脂漏部位の常在真菌であるマラセチアが分解した皮脂成分の刺激や、菌に対する免疫反応が炎症を引き起こす。
目次に戻る
診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
年齢や特徴的部位から診断する。
乳児型は被髪頭部、眉毛部や前額部に紅色丘疹が多発し、黄色の痂皮が固着する(図1)。
成人型は頭部の落屑[らくせつ](いわゆるふけ)の増加や、脂漏部位に鱗屑を伴った紅斑がみられる(図2)。
検査
成人の場合、診断の補助として、酸性メチレンブルー染色で病変部からマラセチアを観察しても良い(「真菌検査」参照)。
目次に戻る
治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
汚れやすい脂漏部位や間擦部位に多いため、洗顔や洗髪は必要であるが、洗い過ぎは良くない。
症状がひどければ、ステロイド薬の外用が行われる。外用中止により再燃することがあり、薬物吸収の良い顔面では、長期使用による副作用を考え、弱めの外用剤を使用することが多い。
マラセチアの関与を考え、外用抗真菌薬あるいは抗真菌薬含有シャンプーを併用する。
合併症とその治療法
成人の場合、長期のステロイド外用剤使用による皮膚萎縮、毛細血管拡張、色素脱失などに気をつける。また、ステロイド薬連用によるざ瘡も生じうる。ステロイド外用剤を休薬し、保険適用外であるがタクロリムス外用剤などを試してみる。難治の場合、ざ瘡に準じた治療も必要となることもある。
治療経過・期間の見通しと予後
乳児型は多くは1年ほどで軽快するが、成人型は慢性かつ再発性である。
看護の役割
治療における看護
・十分な休養、睡眠をとり、ストレスを避ける。
・ 洗顔や洗髪の際、石鹸やシャンプーは低刺激性のものにする。乳児の場合、毎日の入浴で皮脂を落とすことが重要である。
・ 乳児の場合、肌は薄くデリケートであるため、強くこすらないようにする。頭皮や眉毛の中など、頑固な皮脂の塊がみられる場合は入浴前にベビーオイルやワセリン、オリーブオイルなどを塗布し、やわらかくなってから入浴する。
・ 成人型では、湿疹を搔いて皮膚を傷つけないよう、爪を短く切る。再発、再燃を繰り返すことが多く、根気強い治療を必要とする。適切な外用剤を手元にいつも置き、良い状態を維持していくような気持ちで治療していくことが重要であると指導する。
目次に戻る
本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂