貨幣状湿疹、自家感作性皮膚炎|湿疹、皮膚炎④
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は貨幣状湿疹、自家感作性皮膚炎について解説します。
白濱茂穂
聖隷三方原病院皮膚科部長
Minimum Essentials
1貨幣状湿疹は、発疹の形が円形あるいは楕円形で、赤い斑状のジクジクした湿疹をいう。
2自家感作性皮膚炎は、先行する皮膚病変の悪化により、全身性に小さな紅斑や丘疹が多発した状態である。先行病変として貨幣状湿疹が多い。
3貨幣状湿疹はしっかりとしたステロイド外用療法を行うことが重要である。不十分な治療は、自家感作性皮膚炎への移行を招く可能性がある。
4貨幣状湿疹は軽快と増悪を繰り返しやすく、多年にわたり増悪軽快を繰り返す。
貨幣状湿疹、自家感作性皮膚炎とは
定義・概念
貨幣状湿疹は、発疹の形が円形、楕円形で、貨幣に似ていることから命名された。自家感作性皮膚炎は先行する皮膚病変が悪化し、全身性に小さな紅斑や丘疹などが多発したものを指す。先行する病変として貨幣状湿疹が多い。
原因・病態
貨幣状湿疹の病因は不明であるが、細菌アレルギー、金属アレルギー、皮膚の乾燥が関係していると考えられている。自家感作性皮膚炎の本態も不明である。
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診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
貨幣状湿疹は、びらん、痂皮の混在する硬貨大の紅斑が、とくに下肢伸側、体幹に単発あるいは多発する(図1)。
自家感作性皮膚炎は、より小型の紅斑、丘疹が全身性に生じる(図2)。
検査
一般の血液検査ではとくに異常を認めない場合が多い。ジクジクした皮膚病変の細菌培養検査は二次感染を起こしていることがあるので必要である。
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治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
ともに、ステロイド外用療法をしっかり行うことが重要である。乾燥を伴う場合には、入浴後に保湿薬を外用する。また、入浴中にタオルで強くこすったりしないように注意する。
自家感作性皮膚炎では、ステロイド薬の内服を必要とする場合もある。
合併症とその治療法
搔破によって皮膚の細菌感染を生じることがある。表面的なものから深い部位への細菌感染を起こし、抗菌薬の外用や内服が必要となる。搔破、ステロイド外用剤などの影響で皮膚が脆弱となった場合、細菌感染の予防として皮膚の保護を行う。
治療経過・期間の見通しと予後
中高年以降の皮膚の乾燥に基づいた貨幣状湿疹は、軽快と増悪を繰り返しやすい。不十分な治療で搔破を繰り返すと、自家感作性皮膚炎を生じやすい。そのため、通年性に治療が必要となる。
看護の役割
治療における看護
搔破は症状を悪化させ、自家感作性皮膚炎への移行につながることを説明する。症状があれば、適切な外用薬を根気強く外用するように指導する。
中途半端な治療は、慢性化や自家感作性皮膚炎への移行を招くことがあるので、しっかり治療する。洗い過ぎを控え、入浴後に保湿薬を外用する。
乾燥肌の人は、入浴中に洗い過ぎない、入浴後は保湿薬を外用するようにする。症状が落ち着かなければ定期的に外来を受診し、根気強く治療をしていく。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂