手湿疹[主婦湿疹]|湿疹、皮膚炎③
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は手湿疹[主婦湿疹]について解説します。
白濱茂穂
聖隷三方原病院皮膚科部長
Minimum Essentials
1手に接触する物質による刺激や反応が原因となり生じる湿疹である。とくに主婦の手に生じたものは主婦湿疹とよばれる。
2皮膚を保護している皮脂膜が、洗剤などの過度の使用によって障害を受け、皮膚炎を生じる。
4水や洗剤を頻繁に使用する主婦に多い。また、職業的には理容師、調理師、食品加工業者などにしばしば発生する。再発や慢性化しやすい。
手湿疹[主婦湿疹]とは
定義・概念
手に接触する物質による刺激や反応が原因となり生じる湿疹である。手のかぶれ、すなわち接触皮膚炎の1つと考えられる。主婦の手に生じたものは主婦湿疹とよばれる。
原因・病態
皮膚表面では、皮脂腺から分泌された脂と角層が保持する水分が混ざり合い皮脂膜を形成している。石鹸・シャンプーや台所洗剤の過度の使用により正常な皮脂膜が生じにくくなると、さまざまな刺激により皮膚炎が生じる。
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診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
手に限局して皮膚炎を生じる。かゆみを伴う紅斑や小水疱が認められ、慢性化すると皮膚がごわごわした感じになる(苔癬[たいせん]化)。また、乾燥化が進み、皮膚表面が切れて痛みを伴ったり、指紋が消失するタイプもある(図1、図2)。
検査
問診により発症や悪化の原因になっている刺激を検索する。必要に応じて、パッチテスト(貼付試験)を行う。
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治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
保湿薬や油脂性軟膏による皮膚表面の保湿と保護を心がける。かゆみが強い場合には、適切なステロイド外用剤を塗布したり、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬を内服する。また、原因物質があれば、避けるようにする。
手は普段の生活で頻繁に使う部位であるため、軽快しても再燃する可能性がある。普段からスキンケアや保護を心がけるよう指導する。
合併症とその治療法
乾燥、ひび割れなどで物をつかめない場合がある。皮膚が脆弱となっているため、適切な方法による皮膚の保護が必要である。
治療経過・期間の見通しと予後
水や洗剤を頻繁に使用する主婦や理容師、美容師、調理師などに生じやすいので、再発や慢性化しやすい。長期間の治療計画が必要となる。
看護の役割
治療における看護
・手を使わない、仕事を変更するなどの対策が理想だが、現実的には難しいため、根気強い治療が必要であることを説明する。
・手湿疹を防ぐために、シャンプーや手洗いのあとにはハンドクリームや保湿薬を塗布して、失われた皮脂を補うようにする。台所仕事の際は保護手袋を着用するように心がける。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂