発疹の種類|発疹を理解する①
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は発疹の種類について解説します。
瀧川雅浩
浜松医科大学名誉教授
Minimum Essentials
1発疹は明るい光線下で、全身くまなく観察する。
2遠巻きに観察するのでなく、発疹に触れてみる。
3発疹の関連用語を正確に理解する。
発疹理解のポイント
皮膚、粘膜にできる肉眼的変化をそれぞれ皮疹、粘膜疹といい、2つをまとめて発疹という。発疹の正確な観察と口述、記載は、皮膚疾患の正しい診断、また医療者同士の正確な情報交換に重要である。
よく観察する
発疹は明るい光源のもとで観察し、その特徴を把握する。一番眼につく発疹のみならず、周辺の軽微な変化も見逃さないようにする。また、全身に皮疹が出現した場合、被髪部、手掌、足底、口腔・陰部粘膜に変化があるかどうかもチェックする。
自覚症状を聞く
皮疹の訴えでもっとも多いのは「かゆみ」である。蕁麻疹、湿疹、皮膚炎、足白癬(水虫)などは、時に強いかゆみを訴える。「痛み」の原因疾患としては単純ヘルペス、帯状疱疹が考えられる。
触ってみる
観察するだけでなく、触ってみることも重要である。たとえば炎症の場合、触るとやわらかい皮疹では浮腫性の変化が強く、かたくしこっている場合は密に細胞が浸潤している、と考えられる。
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発疹の種類
専門用語とその意味をしっかり理解する。
斑
皮膚から盛り上がらない、平らな発疹を指す。疾患によっては、少し盛り上がる場合もある。
紅斑(こうはん)
赤い斑で、毛細血管の拡張や充血による(図1)。
多くの場合、炎症が契機となる。麻疹、風疹では、小さな紅斑がくっついて(融合して)大きな紅斑になる(図2)。ガラス板で圧迫すると、血管内の赤血球が周囲に圧排されるため退色する。
紫斑(しはん)
ガラス板で圧迫しても、赤血球は血管外にあるので圧排されず、退色しない。高齢者の腕の打ち身による紫斑はよくみられる(図5)。
白斑(はくはん)(図6)
脱色素斑(だつしきそはん)ともいう。メラニンの欠如による尋常性(じんじょうせい)白斑、いわゆるしろなまず(図7)が代表的である。
色素斑
黒色~茶色の斑。メラニン色素の量と皮膚内の分布により、黒色、茶色、スレート(青灰)色、青色になる(図8、図9)1)。
丘疹(きゅうしん)、結節(けっせつ)、腫瘤(しゅりゅう)
いずれも皮膚から盛り上がった発疹。皮膚を構成する細胞の増加、炎症細胞の浸潤、代謝産物の沈着などによる。直径のサイズにより丘疹、結節、腫瘤とよぶ(図10、図11、図12、図13)。
これら発疹は表面の色をつけて記載することが多い。たとえば紅色丘疹、黒色腫瘤などである。丘疹が集合して1つの局面になった状態を苔癬(たいせん)といい、扁平苔癬が代表的な疾患である(図14)。
アトピー性皮膚炎でみられる苔癬化とは意味が違う。袋状の構造物で盛り上がっている場合は囊腫(のうしゅ)とよばれ、表皮囊腫(アテローム)が代表的である。
膨疹(ぼうしん)
蕁麻疹のことで、やわらかい盛り上がりを呈する(図15)。真皮内の浮腫(むくみ)が原因である。数分~数時間で消失する。
水疱(すいほう)(図16)
血清成分の貯留による。パンパンに張った水疱を緊満(きんまん)性水疱(図17)、ぶよぶよとたるんだ水疱を弛緩(しかん)性水疱という2)。とくにサイズが0.5cm以下のものを小水疱とよぶ。また、水疱内容に赤血球が混じるものを血疱(けっぽう)という。
膿疱(のうほう)
黄色い膿の貯留。膿の内容は白血球が主体である。毛包炎(いわゆる“おでき”)などの細菌感染により膿がたまる。細菌感染がなくても膿疱がみられる疾患(掌蹠膿疱症〈しょうせきのうほうしょう〉など)もある(図18)。
皮膚の欠損
亀裂
いわゆる「ひびわれ」(図19)。皮膚の線状の切れ目で、痛みがある。手の湿疹(主婦湿疹)でよくみられる2)。
表皮剝離、びらん、潰瘍(かいよう)、アフタ
欠損の深さにより、浅いものを表皮剝離、びらん、深いものを潰瘍という(図20、図21)2)。いずれも痛みを伴う。
アフタは口腔や陰部の粘膜にできたびらんや小さな潰瘍で、単純ヘルペス、手足口病、ベーチェット(Behçet)病で出現する(図22)。
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壊死
褥瘡や熱傷などが原因で、皮膚が限局的に死んだ状態。表面の色調は赤色~紫色~黒色となる(図23)。壊死組織が細菌感染を受けて黒変し、悪臭を放つものを壊疽(えそ)という。
瘢痕
真皮にまで達する深い傷が治った痕。盛り上がる(隆起性)あるいはへこむ(陥没性)(図24)。
鱗屑(りんせつ)
いわゆるふけのことで、角層が皮膚表面に付着している状態(図25)2)。非常に細かい鱗屑は粃糠疹(ひこうしん)という。鱗屑が皮膚表面から剝がれ落ちることを落屑(らくせつ)という。
痂皮(かひ)
いわゆる「かさぶた」。皮膚表面で体液が乾燥して固まったもの(図26)。血液が固まったものを血痂(けっか)という。
搔破痕(そうはこん)
搔き傷のことで、線条のびらん、痂皮としてみられる(図27)。
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引用・参考文献
1) 瀧川雅浩(監):STEP 皮膚科、第3版、p.28、海馬書房、東京、2010
2) 瀧川雅浩(監):Simple Step 皮膚科、第1版、p.36、39、41、42、46、海馬書房、東京、2016
本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂