発疹の重要なサインと記録法|発疹を理解する②
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は発疹の重要なサインと記録法について解説します。
瀧川雅浩
浜松医科大学名誉教授
Minimum Essentials
1特徴的な皮疹、粘膜疹は診断の一助になる。
病気を見逃さないための重要なサイン
皮疹のなかには、それだけで診断できるものがある。
アトピー性皮膚炎
湿疹がかゆいため、いつもこすったり搔いたりを繰り返す。その結果、皮膚がかたく厚くなり、また皮溝(しわ)が深くなってくる。これを苔癬化という2)。うなじ、首、四肢関節部でしばしばみられる。
光線過敏症
日光や紫外線が当たる露光部(顔面、耳、胸元、手背)に紅斑や水疱ができる(図1)。
膠原病
手足爪の周囲の淡い紅斑と爪上皮(あまかわ)の点状の小さな出血(図2)、下肢に網状皮斑(リベド)(図3)がしばしばみられる。全身性エリテマトーデスの蝶形紅斑、皮膚筋炎でのヘリオトロープ疹やゴットロン(Gottron)徴候は特徴的である。
ウイルス感染症
伝染性紅斑では、頰部紅斑や四肢のレース様紅斑に診断的価値がある。粘膜疹では、風疹(三日ばしか)のフォルシュハイマー(Forschheimer)斑、麻疹(はしか)のコプリック(Koplik)斑、突発性発疹の永山斑をチェックする(図4)。
図4 口腔内粘膜疹
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カルテへの記載方法を知る
発疹がどこにあるか、どのようなパターンで分布しているか、個々の発疹の特徴などについて、見たままに記載する。また、刻々と病変が変化する場合は時間的な変化も併せて記載する。
発疹の分布
体の一部だけ(限局性)なのか、全身に出ているのか(汎発性)をチェックする。1つだけなのか(孤立性)、ぱらぱらみられるのか(散在性)、何個か集合しているのか(集簇性(しゅうぞくせい))、帯状疱疹のように帯状に並んでいるか、丸く輪になって(環状)分布しているのかなども観察する。
また、左右対称に出現しているのか、露光部や被髪部など特定の部位にみられるのかも重要なポイントである。
発疹の種類、形、色
種類、形、色に関しては、「発疹の種類」を参照されたい。いろいろなタイプの発疹が混在する場合は、1つ1つ記載していく。個々の発疹の形は重要な情報である。色も診断価値がある。たとえば、尋常性白斑では色そのものが病名になっている。
また、黒い腫瘤を見たら、脂漏性角化症(高齢者のいぼ)、メラノーマ(悪性黒色腫、ほくろのがん)などを疑う。
記載例
図5は若年者のざ瘡(にきび)である。記載のしかたとしてはたとえば、「左あご全体に、赤い丘疹が散在性に分布している。丘疹に混じって、膿疱、面皰(毛穴のつまり)が数個みられる。また、ざ瘡治癒後の陥凹した小さな瘢痕もある」などとするとわかりやすい。
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引用・参考文献
1) 瀧川雅浩(監):STEP 皮膚科、第3版、p.28、海馬書房、東京、2010
2) 瀧川雅浩(監):Simple Step 皮膚科、第1版、p.36、39、41、42、46、海馬書房、東京、2016
本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂