皮膚科看護の特徴

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は皮膚科看護の特徴について解説します。

 

吉村浩美
前 聖隷三方原病院看護部

 

 

皮膚科看護の特徴

Minimum Essentials

1日常生活や皮膚の状態を観察し、原因を特定する。

2正しいスキンケアが身につくように指導する。

3共感的理解に努め、適切な日常生活を送れるように支援する。

 

皮膚は外界と直接に接し、細菌などの異物が体内に侵入することを防ぐ生体防御の役割に加え、外部刺激に対する緩衝作用や保温作用、エネルギー代謝をも担っている。

 

環境汚染や紫外線量の増大などといった環境変化に加え、アレルギー体質などの内部環境の変化により皮膚疾患患者は増加している。

 

皮膚科看護では皮膚の構造や機能および治療について正しい知識をもち、患者の精神的ストレスを理解したうえでケアにあたらなければならない。また、皮膚疾患の再燃を防ぐためにも日常生活上での指導が重要である。

 

これからの超高齢社会では、皮膚が脆弱である高齢者に対するスキンテア(摩擦・ずれにより発生する外傷性創傷)を予防することも大切である。

 

原因の特定と回避

皮膚疾患では原因を特定するために、アレルギー検査や光線過敏検査、血液検査などを行う。これらの検査で原因が不明のことがあり、遺伝性疾患もあるため、皮膚生検や病理組織検査により疾患を特定する。

 

薬剤による発疹(薬疹)もあり、発症前の状況を十分聴取する。皮膚が脆弱な高齢者であれば低栄養と圧迫により褥瘡が起こりやすいので注意を要する。


最大の予防は、その原因となる因子を避けることである。治療に取り組む患者のストレスを理解して、それらの因子が生活と密着している場合は、日常生活上の細かい指導を行うことが必要である。

 

正しいスキンケア

正しいスキンケアを行うことは、患者の不快感軽減や二次感染の予防につながり、治癒を促進させる。

 

スキンケアの方法は各疾患により異なるため、医師の診察を受け具体的な方法が処方されるまでは自己判断で薬物を用いるべきではない。

 

皮膚疾患は外来治療が多いため、以下のスキンケアのポイントに留意し、その患者に合った指導を行う。

 

ドライスキンを防ぎ皮膚を清潔にする:かゆみのある疾患では室温や湿度を適切にして乾燥を予防し、熱い湯の入浴を避け、を切り搔破(そうは)による創傷をつくらないよう努める。
処方薬は正しく使う:処方薬は指示された用法で用い、自己判断で中断しないように注意する。

 

適切な食事と栄養

皮膚疾患の発症を予防し、さらに悪化を防ぐためには適切な食事が必要である。たとえば、食物アレルギー患者では原因となる食物抗原を除いた食事制限が行われる。

 

また、皮膚の過度の乾燥は栄養不足に起因することがあるため、適切な栄養を摂取することが大切である。患者自身や家族がどのような食事をとれば良いのか、また、避けなければならないかを理解し、バランスのとれた食事を摂取できるよう、栄養科スタッフと協同して指導することが望ましい。

 

皮膚の観察

全身の皮膚の観察により、健康状態の確認、異常の早期発見、回復状況の把握が可能となる。

 

一般的には客観的データとして、皮膚の色調、乾燥湿潤状態、弾性、ツルゴール(turgor:伸展された皮膚が正常な緊張度に戻るスピードのこと)、肌理(きめ)、においなどがあり、付属器である毛髪・爪の観察も行う。

 

発疹では、発疹の種類、数、大きさ、辺縁の形、隆起の形態、表面の性状、色調、かたさ、配列や分布を観察する。

 

精神的ストレスの軽減と心理的影響の理解

過労や精神的ストレスは、皮膚疾患の発症・悪化誘因となるため、休養を十分とり、精神的ストレスの自覚があればそれを回避できるよう看護師が支援する。


皮膚疾患の病変は身体表面に現れるため、患者は他者の眼を気にしやすい。一時的に他者との接触を避けたり、患部が見えないようカバーする工夫を、患者とともに考えつつケアにあたることが望ましい。

 

患者は想像以上に心理的負担を抱いているため、その影響を十分に推察してケアにあたることが肝要である。

 

 

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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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