表皮・真皮・皮下組織|皮膚の構造と機能①

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は表皮・真皮・皮下組織について解説します。

 

瀧川雅浩
浜松医科大学名誉教授

 

 

皮膚の構造と機能

Minimum Essentials

1皮膚にはバリア機能があり、乾燥、外的刺激、紫外線から生体を防御している。

2皮膚は表皮、真皮、皮下脂肪からなり、付属器官として毛包、脂腺、汗腺などがある。

3表皮にはケラチン線維をつくる角化細胞、メラニンを産生するメラノサイト、異物の処理に関与するランゲルハンス(Langerhans)細胞がある。

4真皮は、膠原線維(コラーゲン線維)と弾力線維、およびこれら線維をつくる線維芽細胞、ヒアルロン酸を含む基質からなる。

 

皮膚は全身を覆い、その面積は成人男子で約1.6m2(畳1枚分ぐらい)である。皮膚の厚さは、手のひら、足の裏は厚く、まぶた、外陰部は薄く、体の部位によって違うが、平均3mmである。重さは約3.5kgあり、内臓のなかでもっとも重い肝臓の約3倍にもなる。

 

皮膚は表皮、真皮、皮下脂肪の3つの層からできている(図1左)。付属器には毛包、脂腺、汗腺、立毛筋などがある。また、皮膚の表面には種々の深さ、長さの溝が走行し、手のひらでは指紋をつくる。

 

図1 皮膚の構造

皮膚の構造

 

皮膚の機能(表1)のなかでもっとも特徴的なものは、社会的コミュニケーションとしての役割である。つまり、皮膚はスキンシップをするための臓器である。われわれは肌と肌を合わせて、親子や友人の愛情を確かめ合い、また、顔の色や表情で喜びや悲しみを表す。

 

表1皮膚の機能

皮膚の機能

 

 

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表皮の構造と機能

表皮を構成する細胞には、90%以上を占める角化細胞、おのおの10%以下のメラノサイト(色素産生細胞)とランゲルハンス細胞がある(図1右)。

 

角化細胞

真皮側から、一層の基底細胞、数層からなる有棘(ゆうきょく)細胞、顆粒細胞、そして皮膚最外層の角層に分けられる。角層の細胞を除く個々の角化細胞は、表面から細胞間橋(デスモゾーム)とよばれる小さな棘のような突起を無数に出し、互いにつながっている。また、基底細胞はヘミデスモゾームで基底膜に結合している。メラノサイトとランゲルハンス細胞にはデスモゾームはない。

 

基底細胞は小さくて正方形に近いが、有棘細胞から顆粒細胞へと皮膚表面に向かうにつれ、大きくまた扁平になる。顆粒細胞では細胞質中にケラトヒアリン顆粒がみられ、この部分までの角化細胞は生きている。角層は、線維状のケラチン蛋白で満たされた死んだ細胞の集合である。

 

角化

基底細胞は、時期が来ると皮膚表面に向かって押し出され、有棘細胞、顆粒細胞、角層へと分化し、最終的には皮膚表面から「ふけ」「あか」として脱落する。これにより表皮は一定の厚さを保つことができる。また、皮膚表面に向かって移動する間に、角化細胞はケラチンをつくる。このような、角化細胞の皮膚表面に向かっての移動とケラチンの産生を角化とよぶ。

 

正常な皮膚では、基底細胞が顆粒細胞になるまで2週間、角層ができてそれが剝離するまで2週間を要する。したがって、表皮細胞は1ヵ月経つと入れ替わり新しくなる。角化の速度は、部位や年齢、また病気によって短くあるいは長くなったりする。

 

皮膚のバリア機能

皮膚は、外界からの異物の侵入や刺激から身体を守り、一方で体内から水分が蒸散するのを防いでいる。これをバリア機能という(表2)。このバリア機能を担っているのは角層である。

 

表2 皮膚のバリア機能

皮膚のバリア機能

 

角層はきわめて丈夫な線維であるケラチンの塊であり、外部からの物理的・化学的障害に強い。ケラトヒアリン顆粒が角層中で分解されてできるアミノ酸は、保湿性にすぐれ、天然保湿因子として皮膚に柔軟性を与える。また、角層の細胞間にはセラミドなどを主成分とする脂質が蓄積する。この脂質は細胞同士をくっつけるのりの役目をすると同時に、強い水分保持能をもつ。

 

一方で、角層表面からはいろいろな物質が選択的に吸収される。これを経皮吸収(けいひきゅうしゅう)とよび、膏薬(こうやく)は皮膚のこの機能を利用した薬剤形である。

 

メラノサイト(色素産生細胞)

基底細胞間に分布するメラニンを産生する細胞で、ヒトデのような多くの突起をもつ(図2)。

 

図2 メラノサイトとメラニン産生

メラノサイトとメラニン産生

 

その数は表皮細胞の約5%程度である。メラニンは肌の色を決定する重要な色素であり、メラノサイトの中で、チロシンというアミノ酸からチロシナーゼという酸化酵素によりつくられる。メラノサイトは突起を角化細胞の中へ突き刺し、産生したメラニンを注入する。こうしてメラニンは表皮全体に行き渡る。メラニンは紫外線を吸収し、生体を保護する。

 

メラニン産生は、種々のホルモンや紫外線からの影響を受ける。卵胞ホルモン、黄体ホルモン、脳下垂体ホルモンが血中に増えたり、皮膚に吸収される紫外線量が多いと、メラノサイトは刺激を受け活発にメラニンをつくる。強い日焼けのあとに色が黒くなるのはこのためである。

 

黒人と白人の皮膚を比較すると、メラノサイトの数には差がないが、つくられるメラニンの大きさ、性状が違う。黒人ではメラニンは大きく、また数も多いが、白人は数も少なく、形も小さい。われわれ黄色人種はその中間である。メラニン以外に、肌の色を決める物質を表3にあげた。

 

表3 メラニン以外の肌の色を決める物質

メラニン以外の肌の色を決める物質

 

ランゲルハンス細胞

表皮細胞の約5%を占め、有棘細胞間に分布する。メラノサイトのように多くの突起をもった細胞である。ウイルス、細菌、化学物質など有害物が皮膚に侵入した際、皮膚免疫反応を活性化し、これら有害物を処理し生体を守る。

 

パウル・ランゲルハンス Paul Langerhans(1847~1888)

ドイツの医師。膵臓のランゲルハンス島、皮膚ランゲルハンス細胞を発見した。

 

 

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真皮の構造と機能

真皮には、線維芽細胞によってつくられる2種類の線維がある(図1右)。膠原線維(コラーゲン線維)は引っぱる力に抵抗する線維であり、姿、形を整える。弾力(弾性)線維は伸縮力に富み、しわ、たるみを消して、もとの皮膚の状態にする。

 

線維間の基質は、保湿機能をもったヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸を含有している。これらの成分は、線維が伸縮しやすいように潤滑油の役目をしている。

 

若いヒトでは、これらの線維の太さも一定で、構造も均一であるため、皮膚に張りが出る。ところが年をとるにつれて、線維の量が減り、その太さも一様でなくなる。また線維同士が異常な結合をするため、張りがなくなり、伸縮力も減る。そのため、伸展した皮膚は元の状態に戻れなくなり、しわ、たるみができる。

 

真皮にはいくつかのタイプの神経線維があり、それぞれ痛覚、温覚、圧覚などを感じる。神経線維は手掌、口唇に多い。また、血管も豊富に分布しており、拡張、収縮することにより体温調節をしている。

 

皮下組織

おもに脂肪細胞の集合体で、年齢、性別、体の部位によってその厚さが違う。外的刺激のショックアブソーバー(吸収)、体温調節に重要である。

 

 

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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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