超音波検査|画像検査
『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、超音波検査について解説します。
高木 康
昭和大学医学部教授
〈目次〉
超音波検査とはどんな検査か
音の可聴域20kHzを超える周波数の高い音波を超音波という。超音波検査とは超音波を生体内に発信し、生体内の音響的に性質の異なる境界面から戻ってくる反射波(echo)を検出し画像表示したものである。
画像表示法にはBモード法brightness mode(反射波の強度をモニター上の輝度に変換し超音波が進む方向と平行な断面での二次元の断層像を得る方法。現在最も広く用いられている、図1)とMモードmotion mode(モニターの横軸に時間をとり、Bモード画像のある部分の動きの時間的な変化を波形として表示する。主に心臓の超音波検査で用いられている、図2)がある。また、生体内の断層画像のみでなく、ドップラー法(図3)による血流や血流速度の測定、エラストグラフィ(図4)による臓器の歪(硬さ)の判定なども現在では可能になっている。
図3腎臓のドップラーエコー
超音波検査で使用される超音波は人体には無害で、胎児の検査にも使用でき検査の禁忌はない。装置もCTにMRIなどに比して安価で小型であり、ベッドサイドでも検査可能で、検査料も安く容易に行える検査である。
超音波検査の長所として、きわめて空間分解能にすぐれ精度の高い画像が得られる、リアルタイムの検査であることもあげられる。リアルタイム表示であるため画像誘導下での生検やドレナージなどの各種の穿刺にも応用されている。短所としては、検査はリアルタイム表示で検査を行いながら画像を観察し診断を行うので、その精度は検査を行う医師、技師の技量に依存する。また、リアルタイムなので後から見直すことが困難なこと、骨や空気に囲まれた部位は観察できず死角があることがあげられる。
超音波検査は観察したい部位にあわせて様々な形状や周波数の探触子(プローブ)が利用されている。超音波検査で使用する超音波は2~30MHzである。周波数が高いほど分解能は高くなるが、超音波は深部に行くにつれ減衰し画像が得られなくなる(肥満者は見えにくい)、また周波数が高いほど超音波の減衰も大きく、深部臓器はとらえにくくなる。したがって表在臓器の乳房、甲状腺は7.5~12MHz、腹部は3~5MHzの探触子が使用される。探触子の形状は表在臓器にはリニア型、腹部にはコンベックス型、心臓にはセクタ型が使われる。その他にも経直腸的に前立腺・膀胱、経腟的に子宮、超音波内視鏡など特殊な検査もある。現在では超音波用の造影剤を静注して観察する造影検査も行われている。
超音波検査の目的
生体内の断層画像を無侵襲に観察することでスクリーニングや病気を診断する。また、Mモードで心臓の動きを観察し心機能や弁の働きを評価する。ドップラー法により心臓、血管病変、血流速度の測定、腫瘤内の血流存在診断、エラストグラフィによる臓器や腫瘤の硬さの診断を行う。
超音波検査の実際
観察したい部位に直接探触子を当てるので腹部検査、乳房の検査では通常上半身裸になる。また、探触子と皮膚の間に空気が入らず密着するようジェルを塗るので衣服につかないようタオルで周囲をカバーする。通常は仰臥位で検査を行うが、観察部位によっては腹臥位、側臥位、座位などをとることもある。
超音波検査前後の看護の手順
衣服を脱いでもらうため恥ずかしくないように、また、衣服がジェルで汚れないようタオルで覆う。ジェルは温めておく。検査終了時にはジェルをタオルなどで十分にふき取る。患者が女性で、検査者が男性の場合は女性の看護師が検査に付き添うことがのぞましい。
超音波検査において注意すべきこと
検査の準備、前処置が必要なことがある。また観察したい臓器により前処置が異なる。腹部の検査は空腹時に行う。食後は消化管内の空気が多く、空気や食物残渣に超音波が遮られ観察可能な範囲が狭くなる、胆嚢が収縮し病変の評価が困難になるためである。したがって検査時間に合わせた絶飲食が必要となる。骨盤内臓器では、膀胱に尿をためて膀胱を音響窓にし、前立腺、子宮、卵巣を観察する。表在臓器には前処置は特に必要ない。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
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[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版