腹部CT検査|消化器系の検査

『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、腹部CT検査について解説します。

 

高木 康
昭和大学医学部教授

 

〈目次〉

腹部CT検査とはどんな検査か

腹部CT検査とはCT装置で腹部を撮影し、腹部病変の検索を行う検査である。

 

腹部CT検査の目的

腹部疾患の診断が目的である。腹痛、イレウスなどの原因検索、肝(図1)、胆、膵、腎、副腎など腹部臓器の腫瘍の存在診断、鑑別診断、病変の広がり診断、また、血尿、尿路結石図2)など泌尿器疾患の診断、腹部大動脈瘤などの腹部血管病変の診断、悪性腫瘍患者の腹部転移検索、肝硬変患者の肝細胞癌のスクリーニング、手術用のナビゲーション画像の作成など幅広い適応がある。

 

図1肝ダイナミックCT検査 肝細胞癌(矢印)

肝ダイナミックCT検査 肝細胞癌

 

造影前の画像で肝右葉に低吸収(黒い)の腫瘤が見られる。動脈相で腫瘤は肝実質よりモザイク状に高吸収(白い)に造影され、門脈相で肝実質より低吸収にwashoutされている。典型的な肝細胞癌の造影パターンを呈している。

 

図2左腎結石(矢印)

左腎結石

 

単純CT軸立像で左腎臓の腎杯に一致して石灰化が見られる。造影排泄相の再構成冠状断像で造影剤が尿に排泄され腎盂、腎杯、尿管、膀胱が高吸収(白)に描出されている。MIP画像で腎盂、腎杯、尿管、膀胱が立体的に描出され、左下極の腎杯内に結石がより高吸収の構造物として描出されている。

 

現在ではCT装置の進歩が著しく、多列の検出器によるマルチスライスCT撮影で広範囲を短時間に撮影でき、ギャップのない撮影が可能で、軸位画像のみでなく、再構成による冠状断像など任意の断層面の作成や、三次元表示、および単純撮影、動脈相、静脈相のfusion画像(重ね合わせ画像、図3)やsubtraction(動脈相から造影前の画像を引き算し造影されている部分のみを表示した画像)も作成できるようになっている。

 

図3動脈相、門脈相、肝静脈相の血管三次元画像とそれらのFusion画像

動脈相、門脈相、肝静脈相の血管三次元画像とそれらのFusion画像

 

腹部CT検査の実際

CT撮影装置の検査台に患者を寝かせ、ガントリーと呼ばれる穴に検査台をいれて、撮像範囲を検査台を移動させて撮影する。MRIと異なり撮影中検査台は動く。造影検査の場合には血管を確保して自動注入器で造影剤を静注し撮影を行う。ダイナミック検査では、造影前、造影早期、造影後期など連続して数回撮影することもある。

 

腹部CT検査前後の看護の手順

放射線被曝があるので、特に小児や妊婦の場合には適応を慎重に考慮しなければならない。CT検査自体禁忌はほとんどないが、心臓ペースメーカーや埋め込み式除細動器の一部で誤作動を起こす可能性があるので検査前にチェックが必要である。飲水制限は行わない。

 

CTの造影剤は通常はヨード造影剤を用いる。造影剤を使用する際には造影剤使用の同意書がとられていることを確認する。

 

腹部CT検査において注意すべきこと

ヨード造影剤使用の禁忌(ヨードまたはヨード造影剤に過敏症既往歴など)、原則禁忌(気管支喘息患者など)、慎重投与患者(腎機能低下患者、アレルギー体質など)であるかないか、造影剤併用注意である薬剤(ビグアナイド系糖尿病薬、β受容体遮断薬など)の服用の有無の問診も行う。検査中、検査終了後もアナフィラキシーや造影剤副作用の出現に対処できるよう十分な準備をしておく。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版

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