腹部MRI検査|消化器系の検査

『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、腹部MRI検査について解説します。

 

高木 康
昭和大学医学部教授

 

〈目次〉

腹部MRI検査とはどんな検査か

腹部MRI検査とは MRI装置で腹部を撮影し、腹部疾患の検索を行う検査である。

 

腹部MRI検査の目的

腹部MRI検査はCT同様に腹部疾患の画像診断が目的で幅の広い適応がある。放射線被曝がないので小児、妊婦・胎児(器官形成後)の検査も問題ない。またCTのヨード造影剤による造影検査同様にガドリニウム(Gd)造影剤を用いて造影検査も行われる。また、肝細胞に特異的に取り込まれる常磁性肝細胞特異性造影剤(EOB)による肝腫瘤の鑑別診断(図1)や肝細胞癌治療後の経過観察も行われている。

 

図1肝細胞癌

肝細胞癌

 

肝細胞癌はT2強調画像、拡散強調画像で高信号、T1強調画像では低信号を呈している。造影ダイナミック検査早期相ではGd造影剤と同様に血行動態を示し、造影遅延相である肝細胞相で肝細胞に取り込まれる肝特異性造影剤を用いたダイナミックスタディでは、動脈相で肝細胞癌は濃染し、門脈相でwashoutされ、肝細胞相では造影剤の集積が見られず、典型的な肝細胞癌の所見を呈している。

 

MRIは脂肪抑制画像により脂肪の存在を診断できるので、副腎図2)や腎腫瘤などの鑑別診断にも応用される。造影剤を用いて、あるいは用いないMR angiography(図3)で血管系、heavyT2強調画像で水のみを強調するMRCP(別項参照)やMR urographyで肝胆膵臓、尿路系の検査も行われる。

 

図2右副腎腺腫

右副腎腺腫

 

副腎の腺腫は脂肪を含んでいるため、脂肪の存在を証明できれば腺腫と診断できる。右副腎にT2強調画像で低信号の腫瘤がみられる。T1強調画像in phaseでは腫瘤は肝と同程度の中間信号を呈しているが、脂肪抑制画像であるout of phaseでは信号が低下しているので脂肪の存在を証明でき、副腎腺腫と診断できる。

 

図3腹部のMR angiography

腹部のMR angiography

 

Time of flight(TOF)法という撮像法で腹部大動脈、左右腎動脈が造影剤なしに描出されている。

 

腹部MRI検査の実際

通常のMRI 検査と同様である。検査台に横になり、腹部検査用のコイルを装着し様々なシーケンスで撮像する。CTと異なり検査中検査台の移動はない。造影検査の場合には血管を確保し造影剤を注入して撮像を行う。

 

腹部MRI検査前後の看護の手順

他部位のMRI 検査と同様である。MRI 禁忌でないことを確認し、着替えて磁性体を伴わないようにして検査室へ誘導する。

 

腹部MRI検査において注意すべきこと

他部位のMRI 検査と同様である。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

 

 

[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版

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