MRCP(MR胆管膵管画像)|消化器系の検査

『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、MRCP(MR胆管膵管画像)について解説します。

 

高木 康
昭和大学医学部教授

 

〈目次〉

MRCPとはどんな検査か

MRCP(Magnetic Resonance CholangioPancreatography;MR胆管膵管画像、図1)とは、内視鏡、カテーテル、造影剤、X線透視装置を用いずにMRI装置で胆嚢・胆管・膵管を無侵襲に描出する検査法である。水成分のみを高信号とし三次元データを取得するMR hydrograpyの一種。

 

図1MRCP(MIP画像)正常例

MRCP(MIP画像)正常例

 

長いエコー時間(TE)を用いてheavyなT2強調画像を撮像し、水成分である胆汁、膵液を強調し高信号で、他の部位を低信号で描出し水成分すなわち胆嚢、胆管、膵管のみを画像化したものである。

 

通常は液、腸液も水成分であり、胃や十二指腸が高信号に描出され膵胆管系を重なって診断の妨げになるため、これらの信号を消去するために陰性造影剤であるマンガン製剤を禁忌でなければ経口投与して検査を行う。

 

元画像は二次元の平面画像であるがMaximum Intensity Projection (MIP)処理で三次元画像も作成できる。

 

MRCPの目的

胆石図2図3)、総胆管結石、胆嚢炎膵炎、膵癌(図4図5)の診断や閉塞性黄疸の原因検索など、膵胆管系の病変の診断に用いられる。Endoscopic retrograde cholangiopancreatography(内視鏡的逆行性胆道膵管造影;ERCP)と違い、無侵襲であるが診断のみで砕石やドレナージなどの処置はできない。

 

図2胆石症例-1

胆石症例

 

MRCP(MIP画像)胆囊内に結石による信号欠損(矢印)がみられる。

 

図3胆石症例-2

胆石症例

 

T2強調画像で胆囊内に結石が無信号(矢印)の構造物として描出されている

 

図4膵癌症例-1

膵癌症例

 

MRCP(MIP画像)膵頭部の腫瘍により総胆管閉塞(矢印A)、主膵管閉塞(矢印B)がみられ、その遠位には拡張がみられる。

 

図5膵癌症例-2

膵癌症例

 

拡散強調画像で膵頭部に腫瘍(矢印)が高信号の腫瘤として描出されている。

 

MRCPの実際

通常のMRI検査と同様である。検査台に横になり、腹部用のコイルを装着しTE の長いT2強調画像で撮像する。

 

MRCP前後の看護の手順

通常のMRI検査と同様である。MRI 禁忌でないことを確認し、着替えて磁性体を伴わないようにして検査室へ誘導する。

 

MRCPにおいて注意すべきこと

他のMRI検査と同様である。MRI検査禁忌患者以外にはこの検査自体の禁忌はない。

 

静注するガドリニウム造影剤は使用しないが、ほとんどの症例でマンガン製剤を陰性造影剤として経口投与する。マンガン製剤は消化管穿孔、あるいはその疑いおよび本成分に過敏症のある患者は禁忌である。

 

また、テトラサイクリン系経口抗生物質やニューキノロン系経口抗菌剤などの作用を減弱させる作用があるので、これらの薬剤の服用の有無についての問診を怠ってはならない。

 

飲水制限のある患者にはマンガン製剤を陰性造影剤として経口投与しない。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版

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