微生物検査とは | 検査値早わかりガイド
看護師のための検査値の解説書『検査値早わかりガイド』より。
今回は、微生物検査について解説します。
江口正信
公立福生病院部長
〈目次〉
微生物検査とは
微生物検査の目的は、感染症が疑われる患者からの多種類にわたる検体(尿、喀痰、膿、血液、糞便、穿刺液など)を検査し、病原菌を検索して、さらには起炎菌の各種抗菌性薬剤に対する薬剤感受性試験を実施し、早期診断と治療・回復に役立つ情報を提供することにある。
1. 原因菌の検出・同定
2. 薬剤感受性試験
おもな病原微生物①細菌
細菌は、細胞壁をもつ単細胞の原核生物で、2分裂によって増殖する。大きさはきわめて小さく(約1〜10μm)、顕微鏡で観察する。
おもな細菌の分類法
形態によるもの、グラム染色によるもの、遊離酸素の必要性によるものなどがある。
表6病原性を有するおもなグラム陰性桿菌
おもな病原微生物②真菌
真菌とは、酵母、糸状菌(カビ)などを含み、細菌に比べてはるかに大きい(約10〜100μm)。真菌による疾病には、真菌感染症、真菌がアレルゲンとなる真菌性アレルギー、および真菌の毒性代謝産物(マイコトキシン)による真菌中毒症などがある。
真菌の分類
真菌は酵母様真菌(yeast-like fungus)と糸状菌(mold)に大きく分けられる。
ニューモシスチス・イロヴェチ(pneumocystis jirovecii)
ニューモシスチス・イロヴェチ(現在の正式名称はpneumocystis carinii よりpneumocystis jirovecii となった)は原虫と真菌との中間に位置する病原体であるが、遺伝子解析の結果では、真菌に近いものとされている。ニューモシスチス肺炎の原因となる。
図4ニューモシスチス・イロヴェチ(pneumocystis jirovecii)
おもな病原微生物③原虫
原虫は原生動物ともよばれ、無性生殖によって増殖するものと、無性生殖と有性生殖を交互に繰り返すものがある(約1〜20μm)。
図6子宮頸部よりの細胞診標本内のトリコモナス原虫
おもな病原微生物④ウイルス
現在知られている微生物のなかで最も小さく(約0.01〜0.1μm)、電子顕微鏡によって観察できる。増殖には生きた細胞(動物細胞、植物細胞、細菌細胞)が必要である。 遺伝情報を伝える核酸の種類によって、DNA ウイルスとRNA ウイルスに大きく分けられる。
図7サイトメガロウイルス感染症:サイトメガロウイルス感染細胞
図8水痘
図9伝染性軟属腫:みずいぼ 皮膚組織像
図10ヒト乳頭腫ウイルス感染を伴った子宮頸部異形成
図11尖圭コンジローマ組織像
細菌検査の一般的な検査法
図14培地内の緑膿菌(普通寒天培地)
図18肺炎球菌
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 検査値早わかりガイド 第2版』 (編著)江口正信/2014年3月刊行/ サイオ出版