最終更新日 2019/02/05

緑膿菌

緑膿菌とは・・・

緑膿菌(りょくのうきん、Pseudomonas aeruginosa)とは、グラム陰性桿菌の一つである。土壌やヒトの皮膚、粘膜、消化管にも存在する。栄養が乏しい環境でも増殖、生存可能で、水回りを好むが乾燥には弱く、数時間で死滅する。

 

原因(感染経路)

病院内では特によく検出され、流しや吸入器、花瓶の水など水に関連した場所から出やすい。医療従事者の手指やネブライザー、加湿器、保育器などを介しても感染する。健康な人から分離されることは少ないが、入院患者、特に抗菌薬の長期投与を受けている人や免疫抑制状態の人、血管や尿路などにカテーテルが留置されている人などからは検出されやすい。

 

症状

病原性は弱く、健康な人にはほとんど影響を及ぼさないが、免疫力の低下した人には感染症を起こす(日和見感染症)。肺に基礎疾患のある人の肺炎や、挿管や気管切開されている患者の人工呼吸器関連肺炎、カテーテル関連尿路感染症、手術部位感染、肝胆道系感染症、熱傷創部感染などの起炎菌となる。

 

治療

治療には、抗緑膿菌作用を持つペニシリン系、第三世代の一部と第四世代のセファロスポリン系、カルバペネム系、アミノグリコシド系、ニューキノロン系抗菌薬が用いられる。これら以外の抗菌薬はそもそも効果がない。なお、これら効果があるとされる抗菌薬にも、短期間の間に耐性を獲得する(効かなくなる)のが緑膿菌の特徴である。さらに、イミペネム(カルバペネム系)、シプロフロキサシン(ニューキノロン系)、アミカシン(アミノグリコシド系)の3種類の抗菌薬に対して耐性を持つ緑膿菌を多剤耐性緑膿菌とよび、発症した場合、治療困難な医療関連感染症として問題となる。

 

また、緑膿菌は挿管チューブや膀胱留置カテーテルなど人工物の表面に付着してバイオフィルムとよばれるバリアを形成し、抗菌薬から身を守る性質も持つ。消毒薬に対する耐性を持つ株もあり、低濃度の消毒薬の中では増殖する場合もある。このような場合は物理的に異物を抜去しなければならないこともある。

執筆: 柳井真知

神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター医長

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