そもそも術後せん妄は予防できないの?
『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「術後のせん妄予防」に関するQ&Aです。
佐々木剛
大阪市立総合医療センター薬剤部
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長
そもそも術後せん妄は予防できないの?
早期発見、早期介入で予防できる可能性はあります。
〈目次〉
せん妄とは?
せん妄とは、(表1)のような特徴をもちます。
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せん妄の要因は、術前・中・後のそれぞれにあります。術後せん妄は(表2)のような臨床的特徴をもち、しばしば、カテーテルや点滴の自己抜去、安静保持困難、昼夜逆転などが問題になります。
術前のせん妄の予測と対策
予防対策は、まず術前の評価として、詳細な薬物服用歴の聞き取り、全身状態の評価、知覚・認知障害の発見、手術前の精神的ストレスの有無、神経心理学検査、高齢者専用麻酔計画の使用などの対策を行います。
また、患者本人の現在の状況だけでなく、家族から得られる術前の知的水準やADLに関する情報も、術後せん妄の危険因子の予測に重要です。
術後せん妄は、その危険因子を予測し、早期発見、早期介入を図ることが大事です。具体的には(表3)のような介入でせん妄の予防を図りましょう。
また、薬剤がせん妄の原因になっている場合もあります。せん妄の原因となる薬剤には、(表4)が挙げられます。
術中のせん妄の管理
術中管理としては、十分な酸素化と適切な組織灌流を得るための血圧維持、電解質異常の補正、適切な薬物使用量、使用する薬物の種類を最小限にとどめる、アトロピン、フルラゼパム、スコポラミンの使用を避けるなどが挙げられます。
術後のせん妄への対応
術後対策としては、まず(図1)のように環境整備を行います。術後の疼痛管理も適切に行う必要があります。
せん妄を発症した場合は早期発見、早期介入が重要
せん妄が発症した場合の対応としては、原因の除去(原疾患の治療、原因薬物の除去)、環境調整が基本となります。せん妄が起こった場合、原因薬剤(表4)は中止が望ましいですが、薬剤が原因であるかは可能性であって、さまざまな要因の1つにすぎず、患者の病態から中止できない薬剤もあります。中止するかどうかは主治医とよく相談する必要があります。
[文献]
- (1)石川純, 矢部辰一郎:ここが知りたい他科知識 周術期の対応 術後せん妄の管理法は?.JOHNS 2007;23:405-407.
- (2)Parikh SS, Chung F. Postoperative delirium in the elderly. Anesth. Analg 1995;80:1223-1232.
- (3)山城守也:高齢者術後精神障害とその対策.消化 器外科 1991;14:65-71.
- (4)畝本賜男:術後合併症.Clinical Pharmacist 2013; 3:29.
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社