術後の経口栄養も推奨されているって本当?

『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「術後の経口栄養摂取」に関するQ&Aです。

 

海堀昌樹
関西医科大学外科診療教授
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長

 

術後の経口栄養も推奨されているって本当?

 

本当です。術後早期経口栄養摂取は推奨されています。

 

〈目次〉

 

術後早期経口栄養摂取とは?

「術後1または2病日以内にリキッドダイエット(*1)の経口摂取を開始し、適応状態をみながら通常食に復帰させること」とする定義が一般的に受け入れられています(1)。

 

用語解説リキッドダイエット

経口栄養補給(oral nutritional supplements:ONS)を目的とする製剤であり、糖質を含む経口補水液、半消化態栄養剤、成分栄養剤に大別される(表1)。

 

表1リキッドダイエットの特徴

リキッドダイエットの特徴

 

目的としては、腸管運動回復促進や吻合部損傷治癒促進効果と考えられています。最近では、術後1病日(術後24時間)以内の摂取開始に限定されるようになってきています。

 

術後24時間以内の経口栄養摂取に限定されるようになってきた根拠は?

侵襲の大きな消化器外科系手術、例えば食道切除や肝臓切除、膵頭十二指腸切除などの場合において、術直後の侵襲期がすぎると代謝動態も安定し、十分な栄養管理が可能となります。この際できる限り早期に経口・経腸栄養を開始することが大切です。

 

長期の絶食は腸管の絨毛上皮の萎縮を招き、腸管の有する免疫能を低下させるとともに腸管由来のペプチドやホルモンの分泌を減少させ、腸管内細菌叢の乱れやbacterialtrans-location(*2)ならびに肝内胆汁うっ滞など、種々の合併症を惹起させることがあるためです。

 

用語解説bacterial translocation

腸管腔内の細菌や細菌が放出する毒素が腸管のバリア機構を突破して生体内へ侵入する病態。

 

しかし、高侵襲手術後早期には腸管運動回復遅延などにより3~5分粥食を開始しても、患者はあまり食べられていないのが現状です。

 

術後の経口栄養摂取はどんな方法で行うの?

一般的には術後の消化吸収能としての腸管機能が良好か否かを検討し、不良であれば成分栄養剤を、腸管機能が良好であれば半消化態栄養剤を使用します。

 

糖尿病、肝疾患、腎疾患、呼吸器疾患、がんや免疫調整剤などの各種病態別栄養剤の使用の必要性も検討します。病態栄養剤の適応がなければ一般的な半消化態栄養剤として、液体半消化態栄養剤もしくは半固形化栄養剤の使用を考慮します。

 

いずれにしても術直後の一定期間(1~3日など)をリキッドダイエットにて対処し、その後の食事摂取開始・常食への移行までスムースに行うことが重要です(2)。

 


[文献]

  • (1)Petrelli NJ, Cheng C, Driscoll D, et al. Early postoperative oral feeding after colectomy:an analysis of factors that may predict failure. Am Surg Oncol 2001;8:796-800.
  • (2)寺島秀夫,福沢淳也,只野惣介,他: 消化管吻合 術後の絶飲食療法は必要か―早期経口栄養摂取の エビデンスと有用性―.特集 消化器疾患における 絶飲食療法と栄養管理,消化器科 2007;45:18-24.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社

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