オーラルケアで加算を取るためにはどうすればいいの?

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「オーラルケアでの加算」に関するQ&Aです。

 

露木菜緒
一般社団法人Critical Care Research Institute(CCRI)

 

オーラルケアで加算を取るためにはどうすればいいの?

 

手術などの治療が決まったら、医師から科医へ連絡し、口腔環境を整えるための計画を立てて管理していくと、加算が取れるようになっています。

 

〈目次〉

 

周術期口腔機能管理とは(表1

表1周術期口腔機能管理料

 

入院前
  • 周術期口腔機能管理計画策定料………300点
  • 周術期口腔機能管理料(Ⅰ)…………手術前280点
入院中
  • 周術期口腔機能管理料(Ⅱ)…………手術前500点/手術後300点
退院後
  • 周術期口腔機能管理料(Ⅰ)…………手術後190点
院内または連携する歯科医療機関で一連の口腔機能の管理計画を策定し、歯科医師による歯科治療・歯科衛生士による予防的対応など口腔環境を整える
  • 歯科医師による歯科治療:動揺歯の固定、虫歯の充填、抜糸 など
  • 歯科衛生士による予防的対応:ブラッシング指導、術者みがき、歯石除去、専門的歯面清掃 など

 

平成24年度の診療報酬改定で、「周術期口腔機能管理料」が新設された。これは、周術期における術後の合併症(誤嚥性肺炎など)などの軽減を目的として、歯科が治療開始前から積極的に口腔に介入するしくみとして保険導入されたものである

 

周術期口腔機能管理の対象は「がん等に係る全身麻酔による手術又は放射線治療若しくは化学療法を実施する患者」とされている。

 

加算をとるためには、手術などの治療が決まったら医師から歯科医へ連絡し、口腔環境を整えるための計画を立て、管理していく必要がある(図1)。

 

図1周術期における口腔機能管理のイメージ

>周術期における口腔機能管理

 

厚生労働省:平成26年度診療報酬改定の概要(歯科診療報酬):26.(2014年11月18日閲覧)より引用

 

気管挿管が行われてからの歯科治療は難しいため、手術前・入院前に介入するのが望ましいが、手術後からでも可能である。

 

歯科受診したばかりの患者に対しては、改めて歯科受診させなくてもよいとされているが、手術などの治療を受ける前提で管理されてはいないため、合併症の発症リスクが高い患者は、再受診するのが望ましい。

 

周術期口腔機能管理の導入で術後肺炎の発症率が減少したとの報告がある(図2)。

 

図2周術期口腔機能管理の効果

 

厚生労働省:歯科診療報酬について:37.(2014年11月18日閲覧)より引用

 

周術期口腔機能管理の実際

1術前プラークフリー法

術前に、歯科で専門的歯面清掃を行うことによって、歯垢(デンタルプラーク)を完全に除去する方法である。

 

術前プラークフリーを行っておくと、術後はスポンジブラシや綿棒による清拭程度の簡単な口腔清掃でも、歯垢が再付着しにくくなる。

 

2多職種チームでの介入

オーラルケアは、歯科医との協働だけでなく、NST(栄養サポートチーム)、ICT(感染管理チーム)、ST(言語聴覚士)など、多職種チームでの介入が必要である。

 

多職種チームによる介入により、嚥下訓練・感染管理・栄養管理などが多角的に実施でき、結果的に患者のQOLの向上につながる。その調整役となることも、看護師の大事な役割である。

 


[文献]

  • (1)岸本裕充,曽我賢彦:診療報酬に、なぜ「周術期口腔機能管理」が取り上げられたの?エキスパートナース2012;28:28-31.
  • (2)岸本裕充:知っておきたい!急性期の口腔ケア.オーラルケア,東京,2008:102-103.
  • (3)磨田裕:加温加湿.沼田克雄,奥津芳人編,新版図説ICU呼吸管理編,真興交易医書出版部,東京,1996:310-313.
  • (4)厚生労働省:平成26年度診療報酬改定の概要(歯科診療報酬):26.(2014年11月18日閲覧).
  • (5)岸本裕充,塚本敦美:口腔ケアのアセスメントおよびケア方法概論(1)口腔のアセスメント.8020推進財団編,入院患者に対するオーラルマネジメント,8020推進財団,東京,2008:12.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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