口腔トラブルには、どう対応するの?

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「口腔トラブル」に関するQ&Aです。

 

露木菜緒
一般社団法人Critical Care Research Institute(CCRI)

 

口腔トラブルには、どう対応するの?

 

まずはトラブルの原因を探り、原因に基づいた対応を行います。ポイントは、出血部や潰瘍部などを刺激しないようにすることと、保湿を十分実施することです。

 

〈目次〉

 

出血への対応

まず「どこからの出血なのか」を確認する。

 

口唇の擦過傷など、圧迫止血できるものは圧迫止血を実施する。

 

肉などから出血し続けるときは、凝固能を確認する。

 

出血部を刺激しない(スポンジブラシやガーゼなどでも触らない)。出血部を中心に愛護的に潤滑剤を塗布し、十分に保湿する。

 

局所から出血が持続するときは、医師に相談し、スポンゼル®(止血用ゼラチンスポンジ)などの使用を検討する。

 

潰瘍への対応

まず「なぜ潰瘍ができたのか」を考える。

 

気管チューブによる圧迫が原因であれば、接触部位にドレッシング材を貼付し、直接接触しないようにする。

 

口角の潰瘍であれば、潰瘍が治癒するまで、気管チューブの固定位置を左右へ変更することはやめる。

 

歯牙による褥瘡であれば、やわらかいプラスチックカバーを歯牙につける。

 

潤滑剤を塗布し、保湿を十分に実施する。

 

疼痛時の対応

まず「疼痛の原因」を考える。

 

口腔領域の廃用症候群が原因で開口困難になっているのであれば、無理に開口せず、開口器(アングルワイダーなど)を用いてできるところから始め、少しずつ開口できるようにリハビリテーションを行う。

 

潰瘍による疼痛であれば鎮痛薬を考慮する。キシロカイン®や、ゲル状のキシロカイン®ビスカスも有効である。なお、キシロカイン®によるアレルギーは、防腐剤が含まれているもの以外ではほとんど起こらないといわれているが、主治医と相談して処方してもらう。

 

オーラルケアが快適でないと、患者は再び開口しなくなるため、鎮痛を図り、気持ちよさを感じられるケアを心がける。

 


[文献]

  • (1)岸本裕充,曽我賢彦:診療報酬に、なぜ「周術期口腔機能管理」が取り上げられたの?エキスパートナース2012;28:28-31.
  • (2)岸本裕充:知っておきたい!急性期の口腔ケア.オーラルケア,東京,2008:102-103.
  • (3)磨田裕:加温加湿.沼田克雄,奥津芳人編,新版図説ICU呼吸管理編,真興交易医書出版部,東京,1996:310-313.
  • (4)厚生労働省:平成26年度診療報酬改定の概要(歯科診療報酬):26.(2014年11月18日閲覧)
  • (5)岸本裕充,塚本敦美:口腔ケアのアセスメントおよびケア方法概論(1)口腔のアセスメント.8020推進財団編,入院患者に対するオーラルマネジメント,8020推進財団,東京,2008:12.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

著作権について

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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