自然免疫の担い手は何?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は自然免疫の種類について説明します。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
自然免疫の担い手は何?
自然免疫を担っているのは貪食(どんしょく)細胞、NK細胞、補体(ほたい)、リゾチーム、インターフェロン、サイトカインなどです。これらは化学物質などを用いて病原体を傷害します。
貪食細胞とはマクロファージや好中球など、病原菌を食べてしまう免疫細胞のことです。物理的なバリアを突破して体内に病原菌が侵入すると、これらの貪食細胞が駆けつけ、アメーバが捕食するのと同じ方法で病原体を細胞内に取り込みます。
そして、リソソーム(水解小体)の中に含まれる加水分解酵素によって異物を分解し、消化します(図1)。
図1白血球の貪食作用
NK細胞は、リンパ球の一種です。ウイルスに感染した細胞や癌(腫瘍)細胞を破壊する役割をもち、血液中に一定数(リンパ球の10%)存在して常に監視を行っています。
補体とは生態防御に係わるタンパク質で、血液中に20種類以上存在します。これは細菌などに出合うと、活性化され細菌の細胞膜の表面に孔を開けます。この孔から水が入り込むと、細菌は死滅します。
リゾチームは病原菌溶解酵素の1つです。涙、唾液、母乳などのなかに含まれ、細菌から生体を守ります。
インターフェロンは、ウイルスに感染した細胞が、未感染の細胞を感染から守るために白血球などが分泌するタンパク質です。隣接する周囲の細胞表面に結合すると、結合した細胞のなかでウイルスが増殖できなくなります。
MEMO1リゾチーム
細菌の細胞壁を加水分解する作用をもつ酵素で、この作用を溶菌作用といいます。
MEMO2補体の活性化
補体は細菌の表面などに結合します。細菌に抗体が結合していなくても結合しますが、抗体が結合していると、その抗体に結合します。結合した補体は活性化され、細菌を破壊します。
炎症反応と自然免疫の関係
細菌、ウイルス、外傷、熱傷、薬物などによって身体の細胞や組織が傷害されると、炎症が起こります。これは、生体を守るための自然免疫による応答です。
細胞が傷害されると、炎症はサイトカインやヒスタミン、キニンなどの炎症性物質が細胞から遊離し、周囲の血管を拡張させます。すると血流が増加し、発赤や熱感が生じます。同時に毛細血管の透過性が亢進し、血漿が漏れ出て皮膚が腫脹します(浮腫)。痛みの受容器も刺激されるため、疼痛も起こります。
ここで、免疫細胞が登場します。好中球やマクロファージが毛細血管の隙間から炎症部位に集まり、傷害された細胞や病原菌を取り込みます。この戦いの産物ともいえるのが黄色の膿です。膿には病原菌や組織の断片、死滅した好中球などが混ざり合っています。
※編集部注※
当記事は、2019年6月10日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック 第2版』 (監修)山田幸宏/2023年8月刊行/ サイオ出版