自然免疫はどこで病原体を捕えるの?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は自然免疫のはたらきについて説明します。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
自然免疫はどこで病原体を捕えるの?
鼻、気道、口腔、眼、皮膚、胃腸管(消化管)など、外界に開かれた器官は、常にウイルスや細菌などの病原体の脅威にさらされています。そのため、これらの器官には物理的バリアと化学的バリアが張り巡らされています(図1)。
図1自然免疫の障壁バリア機構
物理的障壁(バリア)の担い手は、皮膚と粘膜です。皮膚は外界との接触が最も多くなるため、13~14層も重なる角質層で異物や微生物が体内に侵入することを防いでいます。皮膚の表面は、汗腺や皮脂腺から分泌される乳酸や脂肪酸により、常に弱酸性(pH4.5~6.6)に保たれ、微生物の増殖を阻止しています。
生体内では、粘膜が皮膚と同様の役割を果たしています。口腔や胃腸管(消化管)は、外に開かれた1本のチューブのような器官です。身体は食物を食べているとき、細菌や雑菌、微生物などを同時に取り込む危険性を常にもっています。こうした病原体を体内(血液内)に取り込まれないように阻止しているのが粘膜です。
粘膜の表面は粘液でおおわれており、病原体は粘液に捕らえられて侵入の足がかりを得ることができません。たとえば、呼吸器の粘膜細胞には外界に向けて一定方向に動く線毛があり、侵入してきた病原体を排除する仕組みがあります。
また、胃に侵入した細菌は胃酸によって殺菌されます。胃腸管(消化管)には腸間膜に多数のリンパ組織があり、そこに属するリンパ球が胃腸管(消化管)からの侵入を監視しています。大腸の腸内細菌叢(そう)は有害な細菌の増殖を抑えています(図2)。
図2免疫システム(系)の器官
※編集部注※
当記事は、2019年6月3日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック 第2版』 (監修)山田幸宏/2023年8月刊行/ サイオ出版