生体のどこの温度を一定にする必要があるの?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回はヒトの体温について説明します。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
生体のどこの温度を一定にする必要があるの?
寒いときに手袋をしないで外に長くいると、手の温度は20°C前後にまで下がることがあります。また、腋窩で体温を測るときに脇を開いて外気にさらしていては、いくら体温計をきちんと挟んでも、なかなか体温は上がりません。
このように、生体の温度は外気によっても、姿勢によっても変化します。恒温動物といっても、体のすべての部位が常に同じ温度ではないのです(図1)。
図1温度分布図
体温は、身体の表面に近い部分と内側では異なります。脳、肝臓、腎臓、消化器などの臓器は常に働いているため、代謝が盛んであり、熱の産生量も多くなります。
これらの部位で測定される体温を深部(核心)温度といいます。実際に体内臓器の温度を常時計測するのは不可能ですが、最も核心温度に近い直腸の温度は37°Cを超えます。
筋や皮膚は熱の産生量が少ないうえ、熱の放散が簡単に行えるため、比較的低い温度を示します。このため、直腸温と腋窩温は1°C近くの差があります。
体温を一定に保つというとき、どこの部位の温度が一定になる必要があるのでしょう。それは、さまざまな生命活動の中枢であり、ホメオスタシスの司令塔でもある脳です。
外気温が20°Cでも、35°Cでも、脳内の温度は37°Cに保たれています。脳の温度が33°C以下に下がると低体温として意識が失われ、42°C以上では高体温として脳の障害が起こることがあります。
MEMO1測定部位による体温
計測を行う部位による温度は、直腸>口腔>腋窩になります。平均的な体温は深部体温である直腸が 37.2°C、口腔が36.8°C、腋窩が36.4°Cです。
※編集部注※
当記事は、2019年4月8日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック 第2版』 (監修)山田幸宏/2023年8月刊行/ サイオ出版