UN、Cre(尿素窒素、クレアチニン)の読み方|腎臓の病態を読む検査
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『エキスパートナース』2015年10月号より転載。
UN(urea nitrogen、尿素窒素)、Cre(Creatinine、クレアチニン)の読み方について解説します。
松本 剛
信州大学医学部附属病院臨床検査部助教
UN、Creの基準範囲
- UN:8-20mg/dL
- Cre:男性0.65-1.07mg/dL
女性0.46-0.79mg/dL
腎機能低下時は上昇↑に注意
UN、Creはどんなときに見る?
- 腎機能の低下が疑われるとき
- 腎機能の評価がしたいとき
〈目次〉
腎臓の役割とUN、Cre検査の意義
皆さんは腎機能が悪くなったと聞いて、どんな病態を思い浮かべますか?その答えを出すために、腎臓の役割を知らなければなりません。
腎臓の役割とは、体にとって不要なものを体外に尿として捨てることです(図1)。腎機能が悪くなったということは、体にとって不要なものを体外に捨てることができない状態を指すことになります。
一般的に、腎機能の評価は「一定の時間に血液からどれくらいの尿を作ることができるか」で行います。これを数字で表したものが糸球体濾過量(glomerular filtration rate、GFR)です。
GFRは1分間に糸球体でどれくらいの量の血液の濾過が行われたかを表すため、GFRが低下するということは、体にとって不要なものを尿として排泄できない状態と言えます。
ルーチン検査(血液検査)の結果からGFRを知るには、図1のように血中の不要物質の濃度を測定する方法が取られます。ただし、直接GFRを測定しているわけではないため、この際に測定する検査項目にはいくつかの条件が必要になります。
その条件は、次の2つです。
①体内で産生量が一定であること
②腎臓で常に決まった割合(理想的には100%)排泄されること
この条件をある程度満たす検査項目が、「UN」と「Cre」です。
(手順1)まずCreを見て、腎機能の変動をつかむ
Creをみて、eGFRを計算する
実際に腎機能を検討する際にはCreを指標にします。Creは筋収縮のエネルギー源であるクレアチンの終末代謝産物であるため、骨格筋量に比例します。各個人の骨格筋量は急激に変化しないため、Creの変動を見ることで腎機能の変動を間接的に見ることができます。
入院中の経過でCre値が上昇すれば腎機能の悪化を、低下すれば腎機能の改善を意味します。
またCreは腎臓糸球体ですべて濾過され、尿細管での再吸収や分泌がほとんどないため、腎機能の評価に有用です。なお、Creの数値から推定される腎血流量を推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate、eGFR)と呼び、年齢・性別・Cre値から計算されます。
腎機能が改善しているのか、悪化しているのかといった変動を評価するのであればCre値の変動を追えば十分です。しかし、腎機能の絶対的評価をするためには、年齢などを考慮したeGFRを計算する必要があります。例えば腎排泄される薬剤の投与量を決定する際には、eGFRを参考にします。
(手順2)UNを見て腎機能低下の原因を絞り込み、その他の病態の有無を評価する
1UN/Creから、腎機能低下の原因を探る
UNはタンパクの代謝産物として体内に蓄積する有害なアンモニアから肝臓で合成される無害な終末代謝産物であり、基本的にはCreに近い腎臓での排泄動態をとるため、腎機能の評価に用いられます。
腎機能の評価だけであればCre値だけで十分かもしれませんが、UNと総合的に評価することで腎機能低下の原因を推察したり、そのほかの病態の有無を評価したりすることが可能となります。
腎機能低下の原因は、大きく「腎前性」「腎性」「腎後性」に分けることができます(図2)。
図2腎不全の原因とUN/Creの関係
腎機能低下の原因を探すためには、UN、Cre、尿検査の結果などから総合的な判断が必要です。
また、特定の薬剤により腎機能障害が起こることがあります。抗菌薬や造影剤は急性尿細管壊死を起こし、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は腎血流低下により腎前性腎不全を起こします。よってCreの上昇があった場合には薬剤によるものなのか、それ以外に原因があるのか、追加の検査をする必要があります。
一般にUN上昇の原因が腎臓の場合にはUN/Cre<20となることが多く、腎臓以外の場合にはUN/Cre>20となることが多いです。また、UN/Cre>30の場合には上部消化管出血が原因の可能性がかなり高いと言われています。
2UNが腎機能以外の原因で増加していないか探る
以下のような原因でUNの増加が起こります。
組織タンパクの異化亢進
主に外傷、手術、重症感染症、悪性腫瘍など体に侵襲が加わった際にエネルギー消費を補う必要がある病態で起こります。これらの病態ではALB値が低下したり、白血球数やCRPなどの炎症反応が増加したりします。
タンパク摂取量の増加
食事量や食事の種類の影響を受けます。患者の食事量がもっとも参考になりますが、検査値としては急激な変化を起こさないことが特徴です。
消化管出血
消化管出血により、腸管内に赤血球や血漿由来のタンパクが増加します。そのタンパク由来のアミノ酸から腸内細菌がアンモニアを合成します。合成されたアンモニアは腸管から吸収され、肝臓でUNに代謝されます。
Creの上昇を伴わないUN上昇があれば、この病態を疑って、貧血の進行がないかをHbの変化で確認し、身体所見として腹部症状の有無、便の色や性状などをあわせて確認するようにしましょう。
細胞外液の減少
細胞外液の減少(脱水、うっ血性心不全、胸腹水の貯留など)の際には、腎血流量の低下の影響だけでなく、尿細管での再吸収の増加の影響が見られるため、UNはより増加します。
細胞外液の減少を疑った場合には、舌や腋窩の乾燥がないか確認することが必要です。検査値ではHbの上昇や尿比重の上昇が見られます。
(手順3)他の検査を併用して、腎機能や病態を把握する
尿検査、シスタチンCを併用する
腎機能や病態を把握するうえで、実際に尿を見る尿検査は重要です。尿中にタンパクや潜血がある場合には糸球体障害を疑います。清潔に採取された尿中に細菌の増加や、多数の白血球が見られた場合には、尿路感染症を疑うきっかけになります。また尿沈渣で円柱が見られた際には糸球体、尿細管を含め、腎実質の障害を疑うため、尿化学検査など追加します。
尿酸値もGFRを反映するとされていますが、食事による影響を受けやすい欠点があります。
近年では血清タンパクの1つであるシスタチンCが、GFRの推定に用いられます。シスタチンCは年齢、性別、筋肉量などの影響を受けにくく、小児・老人・妊婦などでも同じ基準で検査ができると考えられています。
[参考文献]
- (1)村田和也,川崎健治:腎臓の病態.本田孝行編:ワンランク上の検査値の読み方・考え方─ルーチン検査から病態変化を見抜く─第2版.総合医学社,東京,2014:70-75.
- (2)河合忠:4血漿蛋白・含窒素化合物検査B.尿素窒素(または尿素),C.クレアチン,クレアチニン.河合忠,屋形稔,伊藤喜久,山田俊幸編:異常値の出るメカニズム第6版.医学書院,東京,2013:136-142.
- (3)Srygley FD, Gerardo CJ, et al.:Does this patient have a severe upper gastrointestinal bleed?.JAMA 2012;307(10):1072-1079
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P.36~「UN、Cre」
[出典] 『エキスパートナース』 2015年10月号/ 照林社