好酸球性肺炎の疾患解説
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この【実践編】では、呼吸器内科専門医の筆者が、疾患の解説と、聴診音をもとに聴診のポイントを解説していきます。
ここで紹介する聴診音は、筆者が臨床現場で録音したものです。眼と耳で理解できる解説になっているので、必見・必聴です!
初学者の方は、聴診の基本を解説した【基礎編】からスタートすると良いでしょう。
今回は、アレルギー性肺疾患である「好酸球性肺炎」について解説します。
皿谷 健
(杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授)
それぞれ、どんな特徴があるんですか?
詳しくはこれから解説しますので、お互いを比較しながら読んでみてください。
では、一つクイズを出しましょう。
好酸球性肺炎の患者さんのうち、喫煙が原因で発症するのは、急性と慢性のどちらでしょうか?
う~~~ん、タバコが原因ってことは、長い間、喫煙をしていることが関係しているはず。
慢性好酸球性肺炎です!
残念!!
慢性好酸球性肺炎の患者さんの90%は、非喫煙者なんです。
喫煙者の場合は、急性好酸球性肺炎を疑いましょう。
〈目次〉
- 好酸球性肺炎の基礎知識
- 好酸球性肺炎の原因・病態生理
- 好酸球性肺炎の症状・治療
- ・急性好酸球性肺炎の症状と治療
- ・慢性好酸球性肺炎の症状と治療
- 聴診時に気を付けるポイント
- ・急性好酸球性肺炎の患者さんを聴診する場合
- ・慢性好酸球性肺炎の患者さんを聴診する場合
- ナースへのワンポイントアドバイス
- Check Point
好酸球性肺炎の基礎知識
好酸球性肺炎とは、白血球の一種である好酸球によって引き起こされる肺炎のことです。
画像所見では、網状影や浸潤影を認めます。また、気管支肺胞洗浄液中に好酸球の浸潤を認めます。
好酸球性肺炎には、原因不明の特発性好酸球性肺炎と、薬剤や寄生虫感染、血管炎などが原因で発症する2次性好酸球性肺炎の2種類があります。
好酸球性肺炎の原因・病態生理
好酸球性肺炎は、発症の経過によって、急性好酸球性肺炎と慢性好酸球性肺炎に分類されます。
急性好酸球性肺炎は、網状影や浸潤影を認めます。また、肺の両側に胸水を伴うことが多いです。
慢性好酸球性肺炎は、肺の両側上肺野で陰影(病変)を多く見られますが、通常、胸水は貯留しません。
好酸球性肺炎の症状・治療
急性好酸球性肺炎の症状と治療
急性好酸球性肺炎は、性差がなく、小児・成人での報告があります。
症状は数日で進行し、急激な発熱が起こり、5日程度続きます。また、筋肉痛や胸痛を伴います。喫煙が原因で発症する症例も多く認めます。
急性好酸球性肺炎は、自然軽快する場合もありますが、呼吸不全があればステロイド治療を行います。
慢性好酸球性肺炎の症状と治療
慢性好酸球性肺炎の患者さんの男女比は、1:2です。すべての年代で生じますが、ピークは40代です。
咳嗽や体重減少、寝汗、呼吸困難感といった症状が、数週~数か月、または数年かけて進行します。慢性好酸球性肺炎の患者さんの60%に、アレルギー性鼻炎と気管支喘息を合併します。また、患者さんの90%が、非喫煙者です。
慢性好酸球性肺炎を発症する数年前に、気管支喘息や喘息を発症していることがあります。そのため、慢性好酸球性肺炎の患者さんの60%に、喘鳴や捻髪音などの聴診音を認めます。
慢性好酸球性肺炎は、自然軽快することはまれなため、通常はステロイド治療を行います。
目指せ! エキスパートナース疾患を定義する肺胞洗浄液内の好酸球の割合
気管支鏡を使用して、肺を洗った際に出る液体成分のことを肺胞洗浄液と言います。
この肺胞洗浄液のなかに含まれる好酸球の割合が、40%以上の場合を急性好酸球性肺炎、25%以上の場合を慢性好酸球性肺炎と定義します。
また、慢性好酸球性肺炎の患者さんは、一般的に、末梢血の好酸球が上昇します。
一方、急性好酸球性肺炎の患者さんの約30%~50%の方が、発症から1週間程度経過した後、末梢血の好酸球が上昇します。
聴診時に気をつけるポイント
急性好酸球性肺炎の患者さんを聴診する場合
急性好酸球性肺炎の患者さんでは、全肺野をまんべんなく聴きましょう(図1)。
図1急性好酸球性肺炎の患者さんに行うべき聴診の位置
急性好酸球性肺炎の患者さんでは、笛音(ヒューヒュー)やいびき音(グーグー)、水泡音(ゴロゴロ、ブツブツ)など、さまざまなラ音が聴こえる可能性があります。
慢性好酸球性肺炎の患者さんを聴診する場合
慢性好酸球性肺炎の患者さんでは、上肺野に病変を生じることが多いため、上肺野を念入りに聴取しましょう(図2)。
図2慢性好酸球性肺炎の患者さんに行うべき聴診の位置
慢性好酸球性肺炎の患者さんでは、捻髪音(チリチリ、パリパリ)が聴こえることが多いです。
ナースへのワンポイントアドバイス
急性好酸球性肺炎の患者さんでは、親に隠れて喫煙したなど、タバコを契機に発症している症例を、筆者はしばしば経験しています。急に胸水を生じた肺炎を伴う若い患者さんを見た場合は、一度、急性好酸球性肺炎を疑いましょう。
- 好酸球性肺炎は、白血球の一種である好酸球によって引き起こされる肺炎で、急性と慢性の2種類がある。
- 急性好酸球性肺炎では、肺の両側に胸水を伴うことが多く、慢性好酸球性肺炎では、胸水は貯留しない。
- 急性好酸球性肺炎の患者さんを聴診する場合は、全肺野をまんべんなく聴き、慢性好酸球性肺炎の患者さんを聴診する場合は、上肺野を念入りに聴こう。
次回は、実際の急性好酸球性肺炎の患者さんの聴診音を聴いて、特徴をしっかりと覚えましょう。
[次回]
- ⇒『聴診スキル講座』の【総目次】を見る
[執筆者]
皿谷 健
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授
[監 修](50音順)
喜舎場朝雄
沖縄県立中部病院呼吸器内科部長
工藤翔二
公益財団法人結核予防会理事長、日本医科大学名誉教授、肺音(呼吸音)研究会会長
滝澤 始
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科教授
Illustration:田中博志