急性好酸球性肺炎患者さんの聴診音

 

この【実践編】では、呼吸器内科専門医の筆者が、疾患の解説と、聴診音をもとに聴診のポイントを解説していきます。
ここで紹介する聴診音は、筆者が臨床現場で録音したものです。眼と耳で理解できる解説になっているので、必見・必聴です!
初学者の方は、聴診の基本を解説した【基礎編】からスタートすると良いでしょう。

 

[前回の内容]

好酸球性肺炎の疾患解説

 

今回は、アレルギー性肺疾患である「急性好酸球性肺炎患者さんの聴診音」について解説します。

 

皿谷 健
(杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授)

 

好酸球肺炎でも、急性と慢性では異なる点が多いことがわかっていただけたと思います。

 

急性好酸球性肺炎の場合は、急激な発作が起こったり、胸痛を伴ったりして、患者さんは苦しそうですね。
私たち(看護師)にできることがあったら、しっかり看護したいです。

 

すばらしい心がけですね。
正しい看護をするためには、疾患について、正確に理解しておくことが大切です。
ここでは、急性好酸球性肺炎の患者さんの聴診音を紹介しますので、特徴を覚えてください。

 

〈目次〉

 

症例:一般的な急性好酸球性肺炎の患者さん

ここでは、急性好酸球性肺炎の患者さんの症例について簡単に紹介します。自分の担当する患者さんだと思って、イメージしてみてください。その後、実際の聴診音を聴いてみてください。

 

【70歳、女性】

 

主訴咳嗽、呼吸困難。

 

既往歴:なし。

 

内服薬:なし。

 

現病歴:数日前から夜間の呼吸困難、咳嗽が出現。近医を受診し、胸部X線と胸部CTで異常所見を指摘され、来院。

 

画像所見:胸部X線では、両側上中肺野に淡い浸潤影を広い範囲で認める(図1)。

 

図1急性好酸球性肺炎の患者さんの胸部X線画像

 

急性好酸球性肺炎の患者さんの胸部X線画像

 

両側上中肺野を主体に、淡い浸潤影を認めます(黄色ライン)。

 

また、胸部CTでは、両側上肺野に斑状の網状影を認める(図2)。通常は、両側性、または片側性胸水を伴うが、本症例では認めていない。

 

図2急性好酸球性肺炎の患者さんの胸部CT画像

 

急性好酸球性肺炎の患者さんの胸部CT画像

 

両側上肺野に斑状の網状影を認めます(黒矢印)。

 

身体所見体温 36.4℃、SpO2 93%(経1L/分)、呼吸数 26回/分、血圧158/108mmHg、脈拍数 114回/分、胸部は両側肺野に笛音(Grade 3)を聴取。

 

聴診音①:右中肺野で聴いた音

 

ココを聴こう!

1秒、4秒、6秒、9秒付近:「ヒューヒュー」、「キューキュー」という音

 

2.5秒、4.5秒、7秒付近:「チリチリ」、「パリパリ」という音

 

  • 本症例では、呼気時に「ヒューヒュー(キューキュー)」という笛音が、吸気時に「チリチリ(パリパリ)」という捻髪音が聴こえるのがポイントです。この音に気付きましょう。

 

聴診音②:背側で聴いた音

 

ココを聴こう!

1秒~3秒、4秒~6秒、8秒~10秒:「ヒューヒュー」という音

 

  • 本症例では、「ヒューヒュー」という笛音が聴こえるのがポイントです。この音に気付きましょう。
  • 笛音もよく聴いてみると、たくさんの音が重なり合っているのがわかると思います

 

ナースへのワンポイントアドバイス

急性好酸球性肺炎の患者さんでは、さまざまな副雑音(断続性、連続性雑音の混在:捻髪音、水泡音、笛音、いびき音など)を聴取することがあります。

 

ここでは紹介できませんでしたが、慢性好酸球性肺炎の患者さんでは、捻髪音を聴取することが多いです。

 

Check Point

  • 急性好酸球性肺炎の患者さんでは、さまざまな副雑音(捻髪音や笛音)が聴こえる。
  • 慢性好酸球性肺炎の患者さんでは、チリチリ・パリパリという捻髪音が聴こえることが多い。

 

[関連記事]

 

*聴診音は、筆者が実際の症例で収録したものです。そのため、一部で雑音も入っています。

 

 


 

[執筆者]
皿谷 健
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授

 

[監 修](50音順)
喜舎場朝雄
沖縄県立中部病院呼吸器内科部長
工藤翔二
公益財団法人結核予防会理事長、日本医科大学名誉教授、肺音(呼吸音)研究会会長
滝澤 始
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科教授

 


協力:株式会社JVCケンウッド


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