観血的動脈圧測定|循環器系の検査
『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、観血的動脈圧測定について解説します。
高木 康
昭和大学医学部教授
〈目次〉
- 観血的動脈圧測定とはどんな検査か
- 観血的動脈圧測定の目的
- 観血的動脈圧測定の実際
- ・観血的動脈圧測定の必要物品
- ・観血的動脈圧測定の方法(手順)
- 観血的動脈圧測定前後の看護の手順
- 観血的動脈圧測定において注意すべきこと
- 観血的動脈圧測定現場での患者との問答例
観血的動脈圧測定とはどんな検査か
観血的動脈圧測定とは、直接動脈を穿刺してカテーテルを留置し、圧トランスデューサーを用いてモニターに圧波形を表示し、連続的に血管内圧を測定して監視する検査である。また、頻回な動脈血採血による患者の苦痛の軽減が図れる。
観血的動脈圧測定の目的
観血的動脈圧測定は、マンシェットでは測定が困難な場合や、心不全やショックなどで循環動態が不安定で連続的に血圧監視が必要な場合、また血液ガス分析のため頻回に採血が必要な場合に行われる。
観血的動脈圧測定の実際
- 動脈ライン(Aライン)の挿入部位には、橈骨動脈・上腕動脈・大腿動脈・足背動脈などがある。
- 主に橈骨動脈が用いられる。
観血的動脈圧測定の必要物品
・圧セット〔圧トランスデューサー・高圧延長チューブ・圧トランスデューサー架台・水準器・加圧バッグ・ヘパリン加生理食塩液(テルモ生食®500mL+ヘパリン2mLまたは3mL)〕・22G留置針・注射器・固定用テープ・防水処置用シーツ・消毒液・手袋
観血的動脈圧測定の方法(手順)
- ①処置の目的・部位・方法を医師から患者に説明する。
- ②圧セットは医師が処置をする前に組んでおく。
- ③穿刺部位の下に防水処置用シーツを敷き、橈骨動脈が分かりやすいように、手関節を伸展させ、動かさないように固定する。
- ④医師が穿刺部位を消毒し留置針を挿入する(必要時、局所麻酔を使用することもある)。
- ⑤留置針が確実に挿入され、血液の逆流を確認した上で、圧トランスデューサーを接続する。チューブが短いときは、高圧延長チューブを使用する(接続する際は気泡の混入に注意する)。
- ⑥モニター画面に圧波形が映し出され、波形に問題がなければ穿刺部位をテープで固定する。接続部位が直接皮膚に当たらないように、ガーゼなどで保護する。
- ⑦圧ゼロ点補正は患者を仰臥位にし、胸部垂直方向に1/2の高さに圧トランスデューサーを合わせる。
- ⑧患者が手を動かし、正確な圧測定が困難な場合は、シーネなどで固定する。
観血的動脈圧測定前後の看護の手順
- ①処置をする前に患者に留置する必要性、穿刺する際、軽度の疼痛が伴うことを説明する。必要時、局所麻酔が使用できることを説明する(局所麻酔の使いすぎは、動脈触知困難となる場合があるので注意する)。
- ②処置中は患者の不安の軽減に努める。
- ③留置後は、穿刺部の出血や血腫の観察をする。特に血栓溶解薬を使用中の患者は、出血傾向にあるため注意する。
- ④血栓形成による末梢循環障害(冷感、しびれ、疼痛、チアノーゼ)の症状に注意して観察する。
- ⑤感染徴候(刺入部の発赤・腫脹・発熱)の観察をする。また、炎症所見を観察する。
- ⑥モニターの波形が正常な波形を呈しているか、適時観察する。
観血的動脈圧測定において注意すべきこと
- ヘパリン生食は、加圧バッグにセットし、300mmHgの圧をかける(3mL/時程度の速度でヘパリン生食が注入される)。⇒血液の逆流を防ぎ血栓を予防する。
- 加圧バッグの圧が下がっているときやヘパリン生食の量が減っているときは、圧波形が緩やかな浅い波を呈してくるので注意する。
- チューブ内に気泡や血液凝固がみられた場合は、三方活栓から注射器で取り除き、その後は十分にヘパリン生食をフラッシュする。ヘパリン生食のフラッシュが困難なときは、血塊形成の可能性があり、無理に血塊を押し込むと血栓症を起こすため、まずは血液が逆流するかを確認する。
- 圧セットの接続部のゆるみや、三方活栓の向きなどで容易に出血するので注意する。
- 動脈ラインからの採血は清潔操作を徹底し、採血後は十分にヘパリン生食をフラッシュする。また、三方活栓内の血液も取り除き清潔に保つ。
- 閉鎖式動脈ラインキットの場合、採血をする部分がゴム栓になっている。ディスポシリンジを直接ゴム栓に差し込むことで採血ができるため、より清潔に採血を行うことができる。
- 動脈ライン採血時は、強い圧で引くと溶血して正しい血液データが得られないので、自然の逆流を待ち、無理に引かない。
- マンシェットで血圧測定が可能な場合は、モニターとの圧の差を確認して連続監視の指標とする。
- 脈圧の幅が狭く、平均大動脈圧が低く、また頻脈の場合は循環動態が不良であることが多いため、全身状態と合わせて観察する。
- 脈圧が小さく心房圧が高いときは、心タンポナーデなど心不全を疑う。
- 血圧の上昇は、末梢血管抵抗が増大するため、左室の収縮に負荷(後負荷)がかかる。
- 血圧が呼吸性に変動する場合、血管内脱水が考えられる。
観血的動脈圧測定現場での患者との問答例
これから医師によって持続的に血圧が見られる針を動脈に入れます。
どんな針ですか。
二重になっている針です。外側は柔らかく、内側は硬い針になっています。
痛いですか。
針を刺すときは痛みを伴いますが、中の針を抜いて外側の針を入れておくので、痛みはほとんど残りません。
分かりました。
痛くて我慢ができないときは言ってください。それでは、始めます。
はい。
終わりました。痛みはありますか。
最初は痛かったですけど、今は痛くないです。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版