「脳卒中」では、必ず頭痛が出る? フィジカルアセスメントで脳卒中は見抜ける?

『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載。一部改変。
今回はフィジカルアセスメント脳卒中を見抜けるかについて解説します。

 

高野理映
那覇市立病院 集中治療室 主任/脳卒中リハビリテーション看護認定看護師

 

「脳卒中」では、必ず頭痛が出る?フィジカルアセスメントで脳卒中は見抜ける?

 

脳卒中でも、頭痛が生じない場合もあります。フィジカルアセスメントだけで脳卒中を見抜くのは難しいものの、頭痛の機序や特徴を理解すると早期発見につながります。

 

 

頭痛は、臨床でよく遭遇する症状の1つです。

 

頭痛には、命の危険はない頭痛(一次性頭痛)と、命にかかわる頭痛(二次性頭痛)があります。命にかかわる頭痛の代表が、くも膜下出血です。

 

では、脳卒中(くも膜下出血脳梗塞、脳出血)では、必ず頭痛は起こるのでしょうか?

 

頭痛の機序

頭蓋内には、痛みを感じる痛覚感受性組織と、痛みを感じない無痛覚組織があります。自体は痛みを感じませんが、脳を頭蓋につなぎ止めている動脈・静脈・脳神経は、痛みに敏感です。これらが圧迫・伸展・牽引・捻転されると、頭痛が起こるとされています。

 

危険な頭痛を見抜くポイントは、情報収集表1)と神経症状の観察です。患者の訴えを注意深く観察し、脳卒中を疑って確認していくことが重要と考えます。

 

表1 頭痛の診断に必要な情報

頭痛の診断に必要な情報

 

1 くも膜下出血

くも膜下出血による頭痛は、急性(ほとんどが瞬間的)・持続性です。嘔気・嘔吐髄膜刺激症状・意識消失を伴うことが多く、人生最悪の頭痛とも表現されます。

 

脳動脈瘤が破裂すると、動脈血がくも膜下腔に急激に流れ込み、脳が圧迫されるため、急激に頭蓋内圧が亢進し、頭痛が起こるとされています。

 

しかし、糖尿病を有する患者では、激しい頭痛がないこともあります。破裂に先立つ頭痛(前哨頭痛警告頭痛)がある場合や、頭痛が持続せず数分で消失する場合もあります。

 

2 脳梗塞

脳梗塞による頭痛は、血管が詰まって血流が途絶えることに伴う側副循環路の血管拡張や、血栓による血管の刺激、血栓形成時に血小板から放出されるセロトニンプロスタグランジンによるとされます。脳梗塞発症後の脳浮腫も、頭痛の要因となりえます。

 

頭痛の発生頻度は梗塞部位によって異なり、「後大脳動脈塞栓(約70%)>内頸動脈塞栓>中大脳動脈血栓・塞栓>前大脳動脈領域の梗塞」の順です。TIA(一過性脳虚血発作)でも約25%に頭痛が起こるとされます。

 

3 脳出血

脳出血では、急激に脳内に流れ込んだ血液によって痛覚感受性組織が圧迫・進展・牽引され、頭痛が起こります。特に小脳出血では、多くの場合、突然の激しい後頭部痛を伴い、嘔吐めまいも生じるようです。

 

 

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引用・参考文献

1)太田富雄,松谷雅生 編:脳神経外科学I 改訂10版.金芳堂,京都,2008:171,221‐277.

2)医療情報科学技術研究所 編:病気がみえるvol.7脳・神経.メディックメディア,東京,2011:380‐381.


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社

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