「敗血症」患者はICU以外にいる?フィジカルアセスメントで、敗血症は見抜けるの?

『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載。一部改変。
今回はフィジカルアセスメント敗血症は見抜けるかについて解説します。

 

吉田聡子
熊本赤十字病院 救命救急センター 看護係長/救急看護認定看護師

 

「敗血症」患者はICU以外にいる?フィジカルアセスメントで、敗血症は見抜けるの?

 

敗血症患者の約60%は一般病棟にいます。フィジカルアセスメントは、疑わしい患者の抽出・重症化予防に役立ちます。

 

 

「日本版敗血症診療ガイドライン 2016」では、敗血症を「感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされている状態」、敗血症性ショックを「急性循環不全により細胞障害および代謝異常が重度となり、死亡率を増加させる可能性がある状態」1)と定義しています。

敗血症患者は、ICUにしかいないわけではありません。ある病院の調査では、2017年に敗血症と診断名がついた患者のうち、約60%一般病棟に入院していた、とされています。

 

敗血症を疑う指標

感染が疑われる患者に対して用いられる指標がqSOFA(クイックソーファ、quick SOFA)スコアです。これは、意識レベル呼吸数収縮期血圧の変化を経時的に観察し、急激な変化の有無をみるものです。

 

Seymourらは、qSOFA2項目以上に該当する患者は、1項目以下にしか該当しない患者と比べて院内死亡率が3~14倍に増加していた2)と報告しており、集中治療の必要性を考えるためにも有用な指標とされています。

 

qSOFAスコアの3項目は、看護師がベッドサイドで容易に観察できるものばかりです。実際、収縮期血圧低下(≦100mmHg)をみたら、ショックを思い浮かべるでしょう。

 

しかし、軽度の意識変容(そわそわして落ち着きがない、など)や、呼吸数増加(22回/分以上)をみても、なかなか、急変とは認識しにくいかもしれません。

 

「呼吸数増加」「意識変容」は「血圧低下」の前に現れる

呼吸数は、とても重要な指標であるにもかかわらず、経時記録が残されていないケースが少なくありません。まずは呼吸数を看護記録に残し、経過を観察することが大切です。

 

意識変容は、看護師が見て「何か変」を察知することが大切です。周囲への注意力の低下や、落ち着きがなくなった状況を異常ととらえられるかが、アセスメントのカギとなります。qSOFAでは、GCS<15が意識変容の指標とされています。

 

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呼吸数増加や意識変容を察知できれば、血圧低下の前に重症化を見抜くことができます。

 

実際に、感染症疑いで来院後、経過観察中に血圧低下をきたしてICU入室となった患者のカルテを振り返ってみると、来院時「そわそわして落ち着きがない」「呼吸数22回/分以上」であることが、少なくないのです。

 

 

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引用・参考文献

1)日本集中治療学会,日本救急医学会 合同作成:日本版敗血症診療ガイドライン2016.[2018.7.2アクセス].

2) Seymour CW,Liu VX,Iwashyna TJ,et al.Assessment of Clinical Criteria for Sepsis:For the Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis‐3).JAMA 2016;315(8):762‐774.


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社

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