血管腫、リンパ管腫|良性腫瘍③

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は血管腫、リンパ管腫について解説します。

山元 修
鳥取大学医学部皮膚科教授

 

 

Minimum Essentials

1血管やリンパ管の異常増殖や拡張によって生じる多種の病変で、単純性血管腫、苺状血管腫、血管拡張性肉芽腫が代表的である。

2単純性血管腫は隆起しない紅色の斑として、また苺状血管腫は伏せた苺のような鮮紅色の軟性腫瘤として生じる。

3単純性血管腫には色素レーザー照射、苺状血管腫には経過観察が基本である。

4単純性血管腫は無治療で自然消退しない一方、苺状血管腫は自然消退する。

 

血管腫、リンパ管腫とは

定義・概念

血管やリンパ管の異常増殖や拡張によって生じる多種の病変で、一部は母斑症(皮膚や内臓諸臓器に一種の奇形的病変を生じる)の部分症状として発症することもある。

 

原因・病態

反応性の増殖、形成異常により血管が拡張したもの、前2者に相当しない真の腫瘍性増殖が考えられるが、症例によって分類が難しい。

 

ここでは皮膚科・小児科でしばしば遭遇する単純性血管腫、苺状血管腫を中心に、血管拡張性肉芽腫やリンパ管腫についても簡単に触れる。

 

 

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診断へのアプローチ

臨床症状・臨床所見

単純性血管腫は、血管形成異常による毛細血管の増加と拡張を主体とする。出生と同時に認められ、おもに顔面、次いで躯幹上部に生じる隆起しない紅色の斑である(図1)。

 

図1単純性血管腫

単純性血管腫

 

自然消退傾向はなく、また成人期以降ポリープ状に隆起してくることもある。本症はスタージ・ウェーバー(Sturge-Weber)症候群(顔面の単純性血管腫、緑内障、中枢神経症状)やクリッペル・ウェーバー(Klippel-Weber)症候群(四肢偏側の単純性血管腫、患肢の肥大延長)の部分症状として生じることがある。

 

なお、新生児期から乳児期にかけ眉間、前額正中、項部などに生じる単純性血管腫に酷似する斑は正中部母斑とよばれ、新生児の20〜30%にみられるが、大多数は1年半以内に自然消退する(ただし項部のものは半数が成人期まで残存)。

 

苺状血管腫は、未熟な血管を裏打ちする細胞(血管内皮細胞)が増殖する良性腫瘍性病変である。生後間もなく生じる鮮紅色のやわらかい腫瘤あるいは局面で、最初は毛細血管拡張症もしくは紅い小結節として始まり、急速に隆起して半年~1年くらいで完成する。
その名のとおり苺を半分に切って伏せたような形に見える(図2)。その後中央部分から自然消退をきたす点が単純性血管腫と異なる。

 

図2苺状血管腫

苺状血管腫


血管拡張性肉芽腫は、毛細血管の反応性増殖による鮮紅色〜暗赤色のやわらかい結節で、比較的急速に増大する。易出血性である。外傷・感染の先行や妊娠を契機に発症する。


リンパ管腫には限局性リンパ管腫、海綿状リンパ管腫、囊腫状リンパ管腫がある。

 

検査

臨床的に診断がつけやすいため、診断のための検査はとくに必要ない。母斑症が疑われる場合は、X線撮影、CTや眼科的・神経学的精査が必要となる。

 

 

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治療ならびに看護の役割

治療

おもな治療法

(1)単純性血管腫
・色素レーザー照射を行う。
・カバーマーク®などのファンデーションやコンシーラーで美容的に患部を覆う。

 

(2)苺状血管腫
自然消退傾向があるので原則としてそれを待つ。


積極的に治療を行うこともある(眼瞼に発生し視力障害の原因になる場合、気道を圧迫する場合、口腔部に発生し哺乳困難をきたす場合、顔面の巨大なもので後々整容的に問題を残しそうなものなど)が、その際はステロイド薬内服・局所注射、放射線療法、プロプラノロール内服、色素レーザー照射などが行われる。


学童期を過ぎても整容的に問題が残る場合は、外科的手術を行うこともある。

 

(3)血管拡張性肉芽腫
外科的治療(手術的摘出、液体窒素冷凍凝固法)や色素レーザー照射を行う。

 

合併症とその治療

色素レーザー照射により疼痛、腫脹、水疱形成、皮膚の脆弱化を生じ、またまれに瘢痕化をきたす。幼児などで病変が広範囲にわたる場合は全身麻酔が必要になる。

 

内服薬の一般的副作用、放射線療法での放射線皮膚炎(治療はステロイド外用剤)、外科的治療での一般的な合併症(二次感染、瘢痕形成、創離開)に注意する。

 

治療経過・期間の見通しと予後

単純性血管腫の色素レーザー療法には年単位の期間が必要であるが、治療への反応は良好である。苺状血管腫は通常自然消退する。

 

看護の役割

治療における看護

外科的手術やレーザー療法での留意点は、脂漏性角化腫と同様である。通院期間中は、大きな変化や合併症がないか聞き取りを行う。液体窒素冷凍凝固法は疼痛を伴うため援助が必要である。

 

整容面で保護者が不安に思うことが多いので、精神的援助も必要である。

 

 

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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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