ケロイド、肥厚性瘢痕|良性腫瘍②
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回はケロイド、肥厚性瘢痕について解説します。
山元 修
鳥取大学医学部皮膚科教授
Minimum Essentials
1外傷、手術などの創傷に引き続いて生じる、結合組織の増殖よりなる病変である。
2表面平滑な鮮紅色〜褐色調の結節・腫瘤で、ケロイドでは側圧痛が特徴である。
3圧迫包帯療法、ステロイド薬外用もしくは局所注射、トラニラスト内服、外科的切除、放射線療法などがある。
4難治・再発性である。
ケロイド、肥厚性瘢痕とは
定義・概念
外傷、手術などの創傷に引き続いて生じる結合組織の増殖よりなる病変で、元の創面に一致する場合を肥厚性瘢痕、それを越えて腫瘍性に拡大・隆起するものをケロイドという。
原因・病態
原因は不明であるが、創傷形成後の治癒機転の異常により、真皮内で膠原線維が過剰増加する。
通常創傷は炎症性に発赤したかたい未熟瘢痕を経て、炎症がとれた白くやわらかい成熟瘢痕へと変化し安定するが、ケロイドも肥厚性瘢痕も一種の未熟瘢痕に属し、炎症がより少なくより成熟したものが肥厚性瘢痕といえる。
全身的要因、すなわちケロイド体質というものが関与しているといわれる。
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診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
ケロイドは、扁平あるいはドーム状に隆起した表面平滑なかたい腫瘤で、鮮紅色〜褐色調を呈する。はじめの創傷範囲を大きく越えて周囲に拡大するのが特徴で、中央が扁平化し餅を引き延ばしたような形や、蟹の甲羅のような形をとることもある(図1)。
横方向から圧を加えると痛みを生じる(側圧痛)。かゆみもある。創傷部分のすぐ直下にかたい組織(骨や軟骨)がある場所に生じやすい。
創傷の先行が明らかでないものもあるが、ざ瘡や小さな傷など本人が自覚していないものが含まれていると思われる。30 歳未満に多い。
肥厚性瘢痕は本質的にはケロイドと同様であるが、もともとの創傷面を越えることがなく、隆起や紅色調の程度もより軽く、側圧痛がない点でケロイドと異なる(図2)。
検査
悪性腫瘍(肉腫)との鑑別のために生検を行うことがある。
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治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
・ケロイド体質が示唆される患者の術後早期に圧迫包帯療法を行う。
・ステロイド外用剤の密封塗布(ODT)、あるいはステロイド局所注射療法を行う。
・トラニラストを内服する。
・外科的切除術を行う(大きい場合は植皮が必要なことがある)。
・放射線療法を行う。
合併症とその治療
一般的な外科的切除術に伴う合併症(二次感染、創離開)に注意する。
ケロイド体質の場合、外科的切除術後に再発しやすいため、放射線療法や術後圧迫包帯療法を併用することが多い。
放射線療法では放射線皮膚炎が生じることがあるが、ステロイド外用剤を用いる。ステロイド薬の局所的副作用(感染、表皮萎縮など)に注意する。
治療経過・期間の見通しと予後
ステロイド療法の場合は(特に外用の場合)かなり長期間かかり、難治性である。外科的切除術後に再びケロイドを生じやすい。肥厚性瘢痕は、通常数年以内に萎縮性瘢痕になる。
看護の役割
治療における看護
手術的切除の場合は、一般的な外科的看護を行う。ステロイド局所注射療法の場合、注入中はかなり痛みが強いので援助が必要である。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂