脂漏性角化腫|良性腫瘍①
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は脂漏性角化腫について解説します。
山元 修
鳥取大学医学部皮膚科
Minimum Essentials
1中年以降に高齢者を中心に生じる、ごく一般的にみられる良性腫瘍である。
2褐色〜黒色の隆起性のいぼ状結節・腫瘤であるが、それ以外にも症状は多彩である。
3悪性腫瘍との鑑別が必要な場合や本人の希望があれば、外科的治療法を選択する。
4放置した場合、加齢とともに少しずつ大きくなる。外科的に根治可能である。
脂漏性角化腫とは
定義・概念
高齢者の脂漏部位に好発する褐色〜黒褐色の良性皮膚腫瘍で、ごく普通にみられる。いわゆる「老人のいぼ」。
原因・病態
原因は不明である。表皮を構成する細胞に類似した細胞の増殖よりなる。
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診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
中年以降、脂漏部位(頭頸部、胸背部)を中心に躯幹・四肢に生じる。褐色~黒褐色~黒色調の扁平隆起性の結節・腫瘤で、表面が角化性でいぼ状のものが多いが、それ以外にも多彩な外観を呈する(図1)。
通常多発性で、年齢とともに増数する。加齢とともにわずかずつ大きくなるが、悪性化はきわめてまれである。脂漏性角化症ともよばれる。
黒色結節・腫瘤を呈する悪性腫瘍(メラノーマ、基底細胞癌)との鑑別が重要である。
検査
ダーモスコピーが有用である。病理組織学的に診断を確定する。
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治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
・悪性腫瘍との鑑別が必要な場合は手術的に摘出し、病理組織検査に供する。
・本人が整容的に気にして治療を希望した場合は、外科的治療(手術的摘出、液体窒素冷凍凝固法あるいはレーザー蒸散術)を行う。
合併症とその治療
一般的な外科的治療に伴う合併症(二次感染、瘢痕形成、創離開)に注意する。
治療経過・期間の見通しと予後
外科的治療を選択した場合は1~2週間で創傷治癒する。液体窒素冷凍凝固法の場合は大きさにより数回の追加治療が必要である。予後はきわめて良好である。
看護の役割
治療における看護
手術的摘出術やレーザー療法では局所麻酔を行うが、局所麻酔下に行われる一般外科手術と同様、①患者への精神的援助(痛みや治療そのものへの不安の解消)、②手術介助と術中のバイタルチェック、③術後の日常ケア指導(創部の清潔保持)を行う。
液体窒素冷凍凝固法は疼痛を伴うため援助が必要である。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂