HIV感染/AIDS、軟性下疳|梅毒、性感染症(STI)②
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回はHIV感染/AIDS、軟性下疳(げかん)について解説します。
西澤綾
防衛医科大学校皮膚科学講座
佐藤貴浩
防衛医科大学校皮膚科学講座
その他の性感染症
梅毒以外で皮膚症状を呈するSTIには軟性下疳、性器ヘルペス、性器カンジダ症、尖圭コンジローマ、疥癬、ケジラミ症に加え、最近患者数が増加傾向にあるHIV(human immunodeficiency virus)感染/後天性免疫不全症候群(acquired immune deficiency syndrome:AIDS)などがある。
性感染症は、明らかな病変(disease)がなくても病原体に感染(infect)していれば伝播する。そのため、近年ではSTD(sexually transmitted diseases)という用語はSTI(sexually transmitted infections)に取って代わられつつある。
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HIV感染/AIDS
HIV-1による感染症で、CD4リンパ球に感染し、その数を減らすことにより細胞性免疫不全を引き起こし、AIDSとなる。
皮膚所見として、AIDS指標疾患であるカポジ(Kaposi)肉腫(頭頸部、体幹、四肢に暗紫褐色斑、紫斑および血管腫様丘疹が多発し、急速に拡大し硬結節化する)のほか、帯状疱疹などのウイルス感染症、梅毒などの細菌感染症、口腔内カンジダなど多数の皮膚粘膜感染症を合併する。
STIを診断した場合は、HIVスクリーニング検査の保険適用が認められており、現在はHIV-1抗原とHIV-1/2抗体の同時測定キット(第四世代)の使用が推奨されている。スクリーニング法で陽性もしくは保留であった場合は、HIV抗体のウエスタンブロット法とHIV-1核酸増幅検査を行う。
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軟性下疳
軟性下疳は、グラム陰性桿菌である軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)によって引き起こされるSTIであるが、まれである。陰部に潰瘍を認め、潜伏期間は3~7日である。好発部位は亀頭、包皮、陰茎、小陰唇、腟、陰核、肛門周囲で、多発性であることが多い。潰瘍は化膿性で、激しい痛みを伴う。鼠径リンパ節の腫脹は約半数程度に認める。
培養などでの同定が困難なことから、臨床的特徴により診断を行うことが多い。治療はマクロライド系、フルオロキノロン系、アミノグリコシド系抗菌薬が奏効し、症状は通常1週間以内に消失する。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂