妊娠初期の健診とは|妊娠初期の健診とスクリーニング①
『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は妊娠初期の健診について解説します。
立岡弓子
滋賀医科大学医学部看護学科教授
立岡和弘
静岡市立清水病院産婦人科長
妊娠初期の健診
妊娠初期の健診は、妊娠の成立・正常妊娠の診断と問診を中心とする。
memo:妊娠初期
妊娠0週~妊娠15週6日
初期の妊娠健診の目的は、妊婦の産科歴や既往歴をはじめとした問診や計測診で得られる情報などから、母体と胎児の健康状態を管理することにある。
なお、母子保健法では以下のように定められている。
母子保健法第13条
市町村は、必要に応じ、妊産婦又は乳児若しくは幼児に対して、健康診査を行い、又は健康診査を受けることを奨励しなければならない。
妊娠初期は4週間に1回の健康診査を行う。
母子手帳(母子健康手帳)では、「健康診査の内容」として以下の項目があげられている。
- 1健康状態の把握・保健指導(問診および診察)
- 2定期検査(子宮底長、腹囲、血圧、浮腫、尿検査、身長、体重など)
- 3子宮頚がん検診
- 4血液検査(血液型、血算、血糖、B肝、C肝、梅毒)
- 5その他(風疹、トキソプラズマ、HIV、HTLV-1、クラミジア)
以上の検査があり、その「健康診査の結果」を以下のように判定する。
- 1異常を認めない
- 2当院にて(治療・指導)
- 3要精査
- 4要保健師連絡
- 5その他
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問診
初診時の問診票への記載は、妊婦の身体的・心理的・社会的な状態を情報収集し、正常妊娠経過からの逸脱の程度を把握するために行う(表1、図1)。
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身長、体重測定、腹囲測定、血圧測定、尿検査
身長
身長は自己申告となる。
体重測定
妊娠前の体重は、妊娠の栄養状態の指標となる。また、全妊娠の経過中の体重管理の目標設定にもなる。とくに、妊娠初期の体重測定は、つわり症状や食事摂取状況を把握するために重要である(図2)。
腹囲測定
子宮底長は妊娠初期には子宮が小さく測れないため、妊娠5か月頃より測定する。
血圧測定
収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上は、妊娠高血圧症候群を疑う(図4)。
図4 血圧測定
尿検査
妊娠高血圧症候群と妊娠糖尿病の早期発見のために尿蛋白と尿糖を検査する(図5)。
図5尿検査
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内診とそれに伴う検査
内診や超音波検査により子宮筋腫や卵巣嚢腫、子宮奇形の診断を行う。腟鏡診では腟分泌物、子宮腟部、子宮頚管を観察し、腟炎、頚管炎などを診断する。
また、子宮頚がん検査では子宮頚部の細胞を採取し、子宮頚部の病変をスクリーニングする。
内診の手順
1手袋、消毒液(ベンザルコニウム塩化物液)を浸した綿球を準備する(図6)。
2外陰部を消毒する前に外腟口から会陰にかけての培養検査を行う(図7)。
3子宮頚がん検査(図8)として、外陰部を消毒綿球で消毒したのちクスコ式腟鏡をかけて、帯下の観察を行い子宮腟部を露出する。太綿球を生理食塩液に浸し、子宮腟部の扁平円柱境界(図9)を中心に擦過する。この際、頚管粘液の増加(頚管炎)にも注意する。
4子宮頚管内からクラミジアPCR検査を行う。
5双合診(内診)を行い、子宮の向き(前屈、後屈)、子宮の大きさ、付属器の状態、ダグラス窩の状態などを診る。
6経腟超音波を行う(図10)。
図10 経腟超音波
以上で内診に伴う診察を終了する。
7最後に血液検査として、血算、空腹時血糖、血液型(ABO、Rh)、B型肝炎(HBs-Ag)、C 型肝炎(HCV抗体)、梅毒(TP抗体、RPR法)、風疹(HI抗体価)、トキソプラズマ(IgG、IgM)、HIV、HTLV-1(抗体)などを行い、健康診査は終了する。
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本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版