子宮頸部細胞診|妊娠初期の健診とスクリーニング②
『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は子宮頸部細胞診について解説します。
立岡弓子
滋賀医科大学医学部看護学科教授
立岡和弘
静岡市立清水病院産婦人科長
子宮頚部細胞診
近年、がん検診の普及により、進行子宮頚がんは減少しているが、子宮頚部上皮内腫瘍(CIN:Cervical intraepithelial neoplasm)を含む初期病変は増加傾向にある。子宮頚がんの原因としてHPV(ヒトパピローマウイルス)があげられ、性行為感染することから、妊娠初期のスクリーニングを行う意義は大きい。
近年、従来法に比べ、その感度の向上と同一検体よりHPV型判別検査も可能である液状検体法(図1、Liquid-based cytology:LBC)が採用されつつある。妊婦には採取ブルーム型ブラシが硬いので、推奨されていない。
妊婦の場合、子宮頚がんの好発部位である扁平円柱境界(図2)が外反しているため、子宮頚部の細胞を採取するときは、同部を生食綿棒で擦過して細胞を採取する。サンプルはアルコール固定・パパニコロウ染色で標本を作製する。
細胞診採取器具(図3)
①大綿棒:生理食塩液に浸して子宮腟部を擦過する。
②細綿棒:生理食塩液に浸して子宮頚管内を擦過する。妊婦では出血に配慮して、通常この方法を用いる。
③サイトブラシ®:子宮頚管内を5回転して擦過する。妊婦では出血しやすい。
④エンドサイト®:子宮内膜細胞診採集器具。妊婦では使用しない。
⑤吸引チューブ:子宮内膜細胞診採集器具。妊婦では使用しない。
⑥増渕式吸引器:増渕式吸引器に⑤の吸引チューブを接続して子宮腟内に挿入し、陰圧吸引する。卵巣腫瘍や腹水がある場合に使用する。妊婦では使用しない。
⑦プレパラート:細胞塗沫用プレパラート。
⑧ドーゼ:エタノール液を入れ、細胞を塗沫したプレパラートをエタノール固定・保存する容器。
細胞診の判定
細胞診の判定は日母分類(表1)を用いる。
細胞診で異常を認めた症例は、コルポスコープ(図4)を用いた狙い組織診(図5)で確定診断を行う。
近年、細胞診の判定は従来法の日母分類よりベセスダシステムへ移行してきている。従来法との比較は表2のとおりである。
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本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版