感染経路別予防策
『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回は感染経路別予防策について解説します。
江口正信
公立福生病院診療部部長
〈目次〉
感染経路別予防策
感染予防を行うためには、微生物(病原体)の感染経路を知り、その経路を遮断することが重要です。
微生物の伝播は、①接触感染、②飛沫感染、③空気感染の3つの経路に分類されています。
1接触感染
直接接触感染と間接接触感染がある。
- 直接接触感染:患者の皮膚に直接接触する処置時や患者の体位変換 時、入浴介助時など、身体に接触する必要があるケアのときに伝播
- 間接接触感染:患者の環境のなかで汚染された患者の持ち物、着衣、ベッド柵、テーブル、ドアノブなどに触れることで伝播
【主な感染源】
多剤耐性菌(MRSA、VRE)、腸管出血性大腸菌(O-157)、ロタウイルス、 ノロウイルス、疥癬、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルスなど
【予防策】
- ①個室隔離、あるいは集団隔離
- ②入室時は手袋・ガウンの着用。退出時に外し、手指消毒を行う
- ③聴診器などの物品は、専用のものにする
- ④患者が触れるもの(ベッド柵やオーバーテーブルなど)は、1日1回 以上消毒する
- ⑤移動は制限する
2飛沫感染
主に咳やくしゃみ、会話、あるいは吸引や気管支鏡検査などの医療行為中など、患者と近い距離で伝播する 。
【主な感染源】
インフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイル ス、マイコプラズマ、溶レン菌、など
【予防策】
- ①個室隔離、もしくは集団隔離の場合は1m離す
- ②1m以内で作業する場合は、サージカルマスクを着用
- ③患者が室外に出る際は、サージカルマスクを着用
3空気感染
5μm 以下の飛沫核や感染病原体を含む塵が飛散するこ とにより起こる。
【主な感染源】
【予防策】
- ①空気感染隔離室(病室内陰圧、1時間に6回の換気、院 外への排気かHEPA フィルターでの濾過)
- ②入室時は、N95マスクを装着
- ③患者が室外に出る際は、サージカルマスクを着用
スタンダード・プリコーションに加えて、早期に感染経路別予防策を実施することで、感染の拡大を防ぎ、患者に対する過剰な隔離を強いることなく、効果的で経済的な感染予防ができます。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術』 (編著)江口正信/2015年3月刊行/ サイオ出版