マイコプラズマ肺炎【ケア編】|気をつけておきたい季節の疾患【7】

来院された患者さんの疾患を見て季節を感じる…なんて経験ありませんか?
本連載では、その時期・季節特有の疾患について、治療法や必要な検査、注意点などを解説します。また、ナースであれば知っておいてほしいポイントや、その疾患の患者さんについて注意しておくべき点などについても合わせて解説していきます。

 

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マイコプラズマ肺炎

 

マイコプラズマ肺炎_マイコプラズマ肺炎の症状_マイコプラズマ肺炎主訴

 

坂田 司
徳島赤十字病院看護師長・救急看護認定看護師

 

 

 

〈目次〉

 

 

患者さんの看護を行う際、点滴治療や二次感染対策はもちろん重要ですが、患者さんの観察を行い、異常を早期発見することも重要な看護です。その際に念頭に置いておきたいのがABCDアプローチです。
ABCDアプローチは、気道(A)、呼吸(B)、循環(C)、意識(D)の順番で、系統的に生理学的評価と必要な処置を行う方法です。すなわち、患者さんが生命の危険がある状態かどうかをいち早く確認し、生命を維持する緊急の処置を行います。

 

マイコプラズマ肺炎のような呼吸器感染症主に気道、呼吸に異常が出現しているケースが多いです。さらに、全身に炎症を来している場合などは、循環や意識状態にまで異常を来している場合もあります。
従って、患者さんをABCDアプローチで系統的に観察し、異常を発見した際には必要な処置を行うことが重要です。

 

1気道(Airway)の観察

患者さんの観察時に、最初に確認すべきことは、酸素の通り道である気道(A)の評価を行うことです。喘息などを伴う場合には気道が狭窄してしまい、酸素の通り道が閉ざされてしまう可能性があるため、「ヒューヒュー」というような気道狭窄音はないかを確認しておく必要があります。

 

気道の観察では、呼びかけに返答があり、会話が可能であれば気道は開通していると評価できます。万が一、高度な気道狭窄を認めた場合には気管挿管を行うことも念頭に置いて準備をしておかなければなりません。

 

2呼吸(Breathing)の観察

次に呼吸(B)の観察です。マイコプラズマ肺炎は、間質に炎症が起こることでガス交換障害を来し、低酸素血症を来す場合があります
いち早く、低酸素血症の可能性に気付くためには、パルスオキシメーターによる静脈血酸素飽和度(SPO2)の観察だけでなく、呼吸回数や呼吸副雑音の有無、呼吸補助筋の使用の有無、患者さんの表情などもしっかりと観察しておく必要があります。

 

また、低酸素血症を来していると判断した際には、医師に報告し、酸素投与を検討すべきです。すでに酸素投与を行っている場合には、酸素が確実に投与されているかを確認するため、以下の確認を行いましょう。
①酸素チューブは確実に流量計とつながっているか
カニューレやマスクは正しく装着できているか
③チューブ類の屈曲や閉塞はないか
④酸素流量計のフロート(浮き)が投与流量の目盛の中央になっているか
⑤吹き出し口から風が出ているか。

 

3循環(Circulation)の観察

呼吸の安定が確認できれば、循環(C)の観察に移行します。重症化した肺炎患者さんの場合、循環にも影響を及ぼし、血圧の維持が困難なほど、全身性に炎症を来す場合があるため、循環の観察が重要です。
血圧や脈拍はもちろんですが、冷感やチアノーゼの有無、皮膚の性状、発汗などの観察を行う必要があります。

 

入院中の患者さんであれば、補液量、食事量などに対して排尿はどの程度であるかを観察し、総合的に評価する必要があります。

 

4意識(Disability)の観察

前述したように、低酸素血症を呈したり、循環が保てなくなれば意識に異常を来すため、意識レベル評価を行う必要があります。小児の場合は活気があるか、視線が合うかなどを判断指標として用いますが、GCSJCSなどのツールを用いて客観的に判断することで誰もが分かる評価ができるので、評価の仕方を覚えておきましょう。

 

5感染管理について

マイコプラズマ肺炎は飛沫感染、接触感染によって感染します。従って、入院する際には個室管理を行います。もし、個室が確保できない場合は、同一疾患の患者さんを同室に入院させる、コホート管理を行う必要があります。

 

その際、重要なのはナースだけでなく、入室する全スタッフが徹底した標準予防策と飛沫感染予防策をとることです。医療従事者によってほかの入院患者に感染を拡大しないように感染対策を遵守しなければなりません。

 

ナースの視点

マイコプラズマ肺炎が重症化する例は少ないですが、閉塞性細気管支炎や喘息などから重症呼吸不全を来す場合があります。従って、外来受診した際も入院している際も同様に、頻呼吸で低酸素血症を呼吸によって代償しようとしてないか、低酸素血症が遷延して低酸素症となり、意識レベルが低下していないかなど、患者さんが緊急性のある状態ではないかを観察できることがナースには求められます。そのためには普段からABCDアプローチなどによって系統的に患者を観察する癖をつけておきましょう。

 

マイコプラズマ肺炎患者さんのほとんどは小児と成人です。特に、小児の入院の際にはご家族も動揺し、不安を抱えています。そのため、ナースは患者さんやご家族を気遣う言葉がけを行うなど、精神的なフォローを決して忘れてはなりません

 

また、入院した後に重要なのは、感染をほかの患者さんに拡大させないことです。そのためには、感染対策(標準予防策と飛沫感染予防策)に関して、全職員が実施できなければなりません。特に、ナースは患者さんとかかわる時間が長いため、ICTや感染対策委員会などと連絡を取り合って、中心的にベッドコントロールなどを行い、感染対策を講じる必要があります。

 


[文 献]

 

  • (1)日本医療機能評価機構認定病院患者安全推進協議会編.感染管理に関するツール集 2014年度版.患者安全推進ジャーナル別冊.日本医療機能評価機構.2014,142p.
  • (2)矢野邦夫 ほか訳編.医療現場における隔離予防策のためのCDCガイドライン.大阪,メディカ出版.2007,214p.

 


[監 修]
辻本登志英
日本赤十字社和歌山医療センター 集中治療部長 救急部副部長

 

芝田里花
日本赤十字社和歌山医療センター 副看護部長 救命救急センター看護師長

 


[Design]
高瀬羽衣子

 


 

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