膀胱訓練は不要と聞くけれど、いつでも不要?|術前・術後ケア

『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「膀胱訓練」に関するQ&Aです。

 

羽阪友宏
大阪市立総合医療センター泌尿器科
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長

 

膀胱訓練は不要と聞くけれど、いつでも不要?

 

膀胱訓練(クランプテスト)は、どのような場合でも不要です。

 

〈目次〉

 

膀胱訓練は1つではない

周術期看護領域での「膀胱訓練」とは、いわゆるクランプテストのことです。施設により方法はさまざまですが、尿道カテーテルをクランプ後、3~5時間経過するか、尿意の訴えがあるまでクランプしておくことで、膀胱容量を改善させたり、尿意の有無を確認することを意図しているようです。

 

一方、泌尿器科領域では、切迫性尿失禁頻尿の患者に、尿意を少しがまんしてもらって排尿間隔を引き延ばす行動療法がありますが、これが本来の「膀胱訓練」です。

 

用語の整理と周知に関しては今後の課題ですが、ここでの膀胱訓練とは、前者のクランプテストのことを指します。

 

膀胱訓練はなぜ不要といえるか

膀胱訓練が必要かもしれないと考えうる状況には、

 

  1. 尿道カテーテル留置が長期になったとき
  2. 膀胱に関する神経を損傷した可能性があるとき

が挙げられます。

 

術後、やむを得ず尿道カテーテル留置が長期になったときは、膀胱容量が小さくなっている可能性がありますが、尿道カテーテル抜去後、蓄尿を続けていれば通常、膀胱容量は自然に改善してきます。膀胱訓練の有無にかかわらず結果は同じであり、膀胱訓練は不要といえます(図1)。

 

図1尿道カテーテル留置が長期になったとき

尿道カテーテル留置が長期になったとき

 

手術や外傷により、膀胱に関する神経を損傷した可能性があるときは、膀胱訓練により、尿意の喪失を確認することはできますが、その場合、尿道カテーテルを抜去して導尿などの適切な治療を開始しなければなりません。膀胱訓練の有無にかかわらず治療方針は同じであり、やはり膀胱訓練は不要といえます(図2)。

 

図2膀胱に関する神経を損傷した可能性があるとき

膀胱に関する神経を損傷した可能性があるとき

 

文献をふまえての考察

CDCの「カテーテル関連尿路感染症予防ガイドライン」(1)では、カテゴリーⅡ(弱い勧告)であるものの、バルーン抜去前にクランプは不要である、とされています。

 

また、113人の股関節骨折患者での検討(2)では、正常の膀胱機能に戻るまでの期間、尿道カテーテル再留置を要した症例数、入院期間の項目で、膀胱訓練の優劣は認められませんでした。

 

ほかに、60人の脳卒中患者での検討(3)では、初尿までの時間、初尿の量や、残尿量などに有意な違いはなく、それどころか、膀胱訓練群で、3人(7.5%)で症候性尿路感染を認めたとされています。

 

文献からは、術後尿道カテーテル抜去前の膀胱訓練に優位性はなく、むしろデメリットがあるようです。調べた限りでは報告はないものの、クランプ解除が遅れることによる事故の発生も懸念されます。

 

以上より、膀胱訓練はどのような場合でも不要と考えられます。

 


 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社

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