尿道カテーテル留置が長期になる 場合、定期的な交換が必要?
『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「尿道カテーテルの留置」に関するQ&Aです。
上川禎則
大阪市立総合医療センター泌尿器科部長
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長
尿道カテーテル留置が長期になる場合、定期的な交換が必要?
いいえ。定期的な交換は必要ありません。
〈目次〉
尿道カテーテルの交換は何のためにするのか?
「尿路感染を予防するために定期的な尿道カテーテルの交換が必要」と考えていませんか。
最近、感染の少ない閉鎖式尿道カテーテル(カテーテルから採尿バッグまで一体となったカテーテル)の留置が一般的になってきましたが、この閉鎖系システムを用いても、長期にカテーテルを留置すれば感染は必発です。報告によれば、開放式尿道カテーテルで4日後、閉鎖式尿道カテーテルでも30日後にはほぼ100%細菌尿が見られるといわれています。つまり、定期的な尿道カテーテルの交換で尿路感染は予防できません(1),(2)。
どんなときにカテーテルを交換するか?(図1)
尿道カテーテルの交換が必要となるのは、カテーテルに閉塞が起こった場合、または起こる兆しがある場合です。この他、感染が著しい場合や、閉鎖式システムが破綻したときにカテーテルを交換します。
一般的には、長期のカテーテル留置の場合、閉塞がなくても1~2か月に1回程度の交換が推奨されています(2)。
しかし、期間を決めて定期的なカテーテル交換を行うのではなく、個々の患者の状態に応じて交換の時期を考えましょう。閉塞しやすい人の場合には、1週間ごとの交換が必要になることもあります。
カテーテル留置中の注意点(図2)
尿道カテーテルは閉鎖式システムであることが原則です。経尿道的手術後などカテーテル閉塞が予想される場合以外には、膀胱洗浄など閉鎖式システムを破綻させる行為は勧められません。
カテーテル出口部の外尿道口周囲の消毒も細菌尿の発生予防の効果はなく、必要ありません。細菌の侵入を防ぐためには、採尿バッグから尿を排出する際、先端が床や尿の回収容器に触れないように注意しましょう。
また、カテーテルの過度の屈曲や、採尿バッグを膀胱より高く固定する行為は、尿流を妨げ感染の原因となるので行ってはなりません。
尿道カテーテルはできるだけ早期抜去をしましょう
術後の尿道カテーテルはできるだけ早期に抜去し、尿道カテーテルの適正使用を心がけてください。尿道カテーテルにより尿路感染を起こしても、カテーテルを抜去すれば、たいていの場合、感染は治癒します。
漫然と定期的な尿道カテーテルの交換をするのではなく、常に尿道カテーテルを抜去するタイミングを考えましょう。術後、一時的に排尿ができなくても、しばらくすると自排尿ができるようになることもあります。あるいは、間欠的自己導尿への転換なども考えてみましょう。
[文献]
- (1)Gould CV,Umscheid CA,Agarwal RK,et al.Guideline for prevention of catheter-associated urinary tract infections 2009.Healthcare Infection Control Practices Advisory Committee.Infect Control Hosp Epidemiol 2010;31:319-326.
- (2)日本泌尿器科学会泌尿器科領域における感染制御ガイドライン作成委員会松本哲朗,荒川創一,高橋聡,他:泌尿器科領域における感染制御ガイドライン.日本泌尿器科学会,東京,2009.http://www.urol.or.jp/info/data/200905-1.pdf(アクセス2014.4.10.)
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社