経皮経肝胆囊ドレナージ:PTGBD | ドレーン・カテーテル・チューブ管理
『ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は経皮経肝胆囊ドレナージ(PTGBD)について説明します。
野村幸博
総合病院国保旭中央病院病院長
志村謙次
総合病院国保旭中央病院消化器内科主任部長
三浦清代
総合病院国保旭中央病院看護部
《経皮経肝胆囊ドレナージ(PTGBD)の概要》
主な適応 |
急性胆囊炎、閉塞性黄疸 |
目的 |
胆汁のドレナージ |
合併症 |
術中~直後 : 徐脈・ショック、菌血症、気胸 術直後~数日 : 腹腔内出血・肝内血腫、胆汁性腹膜炎 術後数日以降 : ドレーン閉塞・逸脱、脱水・電解質異常、凝固障害 |
抜去のめやす |
術後2週間以上経過し、瘻孔形成および胆囊管開存が確認されれば抜去可能 |
観察ポイント |
排液の色 : 胆汁が緑色の場合、感染もしくは閉塞・逸脱の可能性がある |
ケアのポイント |
感染時 : 重篤な場合、敗血性ショックを招くため、バイタルサイン、腹痛、採血データで炎症反応を確認する 閉塞時 : 屈曲の有無を確認し、ミルキングローラーでミルキングを行う |
〈目次〉
- 経皮経肝胆囊ドレナージ(PTGBD)の定義
- 経皮経肝胆囊ドレナージ(PTGBD)の適応と禁忌
- 経皮経肝胆囊ドレナージ(PTGBD)の挿入経路と留置部位
- 経皮経肝胆囊ドレナージ(PTGBD)の合併症
- 経皮経肝胆囊ドレナージ(PTGBD)の利点と欠点
- 経皮経肝胆囊ドレナージ(PTGBD)のケアのポイント
経皮経肝胆囊ドレナージ(PTGBD)の定義
経皮経肝胆囊ドレナージ(percutaneous transhepatic gallbladder drainage:PTGBD)は、胆囊をドレナージする方法の1つである。
右肋間の皮膚から、肝臓を経由して胆囊を穿刺し、胆囊内にドレーンを留置する。
経皮経肝胆囊ドレナージ(PTGBD)の適応と禁忌
1適応
経皮経肝胆囊ドレナージ(PTGBD)の主な適応は①急性胆囊炎であるが、②閉塞性黄疸にも適応となることがある。
①急性胆囊炎
急性胆囊炎の原因は、ほとんどの場合、胆囊結石による胆囊管の閉塞であり、胆囊内に胆汁がうっ滞して炎症が起こる。
急性胆囊炎は、重症度によって重症・中等症・軽症に分類される1。重症または中等症の急性胆囊炎で、緊急手術の適応がない場合や、緊急手術が困難である場合にPTGBDを行って、うっ滞した胆囊内容をドレナージする。軽症あるいは中等症で手術可能な場合は、早期に腹腔鏡下胆囊摘出術を行う(表1)1,2。
②閉塞性黄疸
総胆管下部の閉塞によって黄疸をきたしている症例で、内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP、『内視鏡的胆道ドレナージ』参照)や経皮経肝胆管ドレナージ(PTBD、『経皮経肝胆管ドレナージ:PTBD・PTCD』参照)によるドレナージが困難な場合は、PTGBDによって減黄を図ることがある。
2禁忌
①穿刺部位付近の腹水
腹水のため胆汁が腹腔内に漏れやすく、胆汁性腹膜炎を起こす。
大量の腹水がある場合は、カテーテルの留置手技自体が困難である。
②出血傾向・凝固異常
血小板減少(5万/mm3以下)、プロトロンビン時間延長(PT-INR1.4以上)、抗血栓薬の使用は、PTGBDによる出血のリスクを増大させる。
抗血栓薬は、適当な期間休薬してからPTGBDを行うのが望ましいが、PTGBDの利益がリスクを上回ると判断される場合は、休薬せずに行うことがある。
③造影剤アレルギー
超音波と非造影透視のみでPTGBDを施行する。
④呼吸を止められない場合
胆囊が動いてしまうので穿刺が困難となる。ショックなどで全身状態が不良の場合は、気管内挿管のもとでPTGBDを行うこともある。
経皮経肝胆囊ドレナージ(PTGBD)の挿入経路と留置部位
超音波で穿刺ルートを確認し、決定する。この際、腹水・胸水の有無を観察し、カラードップラーで穿刺ルート上に血管のないことを確認する。胆囊の頸部寄り3分の1のところを目標とする。胸腔が肝表面まで入り込んでいることがあるので、肺から十分離して穿刺部位を決定する。
穿刺は、超音波ガイド下にセルジンガー(Seldinger)法に準じて行う(図1)。
固定時の注意点を表2に示す。
経皮経肝胆囊ドレナージ(PTGBD)の合併症
PTGBDの注意すべき合併症を表3に示す。
経皮経肝胆囊ドレナージ(PTGBD)の利点と欠点
利点 : 手技が比較的容易で、安全性・確実性が高い4。さらに、重篤な急性胆囊炎の患者でも安全に施行可能で、全身状態が回復してから待機的に手術を行える。
欠点 : 胆囊癌が合併していると、瘻孔などに播種してしまう危険性がある5。また、早期手術例と比較すると、入院期間が長期になる。
経皮経肝胆囊ドレナージ(PTGBD)のケアのポイント
PTGBD挿入管理において、排液の色調(図2)、量、ドレーンの固定方法の観察が重要であり、観察することで異常に気づき早期に対処できる。
1胆囊管が開存していない場合(図3)
胆汁は閉塞(胆囊結石や炎症による浮腫など)により胆囊内へ流れないため、色は「膿性」や「淡血性」である。
流出量は0~50mL/日で、炎症の改善とともに減少する。
2胆囊管が開存している場合(図4)
胆汁は胆囊内へ流れるため、胆汁と混同したものが流出する。
正常な胆汁は透明な黄茶色をしているため、炎症の改善とともに「透明な黄茶色」に変化する。
胆汁の生産量は約500mL/日であるが、胆管側へも流出するため、これよりも少ない400mL/日前後である。
3特に注意したいポイント
①出血
1日の出血量が少量であっても、長期間つづく場合は貧血に注意する。
②感染
胆汁が細菌感染すると「緑色」に変化する。重篤な場合は敗血性ショックを起こすため、バイタルサイン、腹痛の有無、採血データで炎症反応を確認する必要がある。
③ドレーンの閉塞・逸脱
胆汁が緑色に変化した場合は閉塞も疑われるため、ドレーンを固定しているテープを剥がし、ドレーンの屈曲の確認やミルキングローラー用いたミルキングを行い、排液の流出を促す。それでも改善がない場合は医師へ報告する。
流出がないときは、ドレーンの逸脱か閉塞が疑われる。固定位置の確認や前述のように介入する。
[Profile]
■野村幸博
■総合病院国保旭中央病院副院長/外科主任部長
■志村謙次
■総合病院国保旭中央病院消化器内科主任部長
■三浦清代
■総合病院国保旭中央病院看護部
*略歴は掲載時のものです。
[引用・参考文献]
- (1)Yamashita Y,Takada T,Strasberg SM,et al. TG13 surgical management of acute cholecystitis.J Hepatobiliary Pancreat Sci2013;20(1):89-96.
- (2)急性胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン改訂出版委員会編:ーTG13新基準掲載ー急性胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン2013第2版.医学図書出版,東京,2013:161-169.
- (3)加藤裕治郎,田中淳一,梅澤昭子,他:PTBD,PTGBDチューブ逸脱例の検討.胆道1993;7(5):587-593.
- (4)伊藤啓,洞口淳,越田真介,他:急性胆囊炎に対する経皮的ドレナージ術.胆と膵2013;34:911-915.
- (5)岡本好司:胆囊癌を合併した急性胆囊炎に対する手術.手術2006;60(12):1827-1832.
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2015照林社
[出典] 『ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド第一版』 (編著)窪田敬一/2015年7月刊行/ 株式会社照林社