カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法(看護・ケアのポイント)/肺がん
この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、肺がん(肺癌)の患者さんに使用する抗がん剤「カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法」について、看護・ケアのポイントについて紹介します。
第1話:『カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法(化学療法のポイント)/肺がん』
久保寿夫
(岡山大学病院 腫瘍センター)
〈目次〉
- 必ず覚えて! カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法の注意点
- ・投与前の注意点
- ・投与中の注意点
- ・投与後の注意点
- カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法時の申し送り時のポイント
- カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法時の看護記録に記載すべきこと
- 患者ケア・看護ケアはココを押さえる
必ず覚えて! カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法の注意点
投与前の注意点
前投薬(ジフェンヒドラミン、デキサメタゾン、ファモチジン)が確実に入っているかを、必ず確認しましょう。
また、パクリタキセル(タキソール)は添加材として無水アルコールを含んでいます。200mg/m2を投与した場合、缶ビール500mL相当のアルコール量になりますので、アルコールに対してアレルギーがないか、お酒に弱くないか事前に確認して、治療当日は自動車などの運転は控えてもらいましょう。
ベバシズマブ(アバスチン)は扁平上皮がんには使えません。また、喀血や血痰があると使えませんので、そのような症状がないか再度確認しましょう。
投与中の注意点
投与中にはアレルギー症状が起きていないか、注意して観察しましょう。じんま疹や顔のほてり、冷や汗、気分不良、呼吸困難などのアレルギー症状が出現した場合には、投与を直ちに中止し、主治医に報告し、ステロイドやアドレナリン投与など適切な処置を行ってください。投与中は血圧や脈拍などのバイタルサインのモニタリングを頻回に行い、患者さんの状態を十分に観察しましょう。
また、パクリタキセル(タキソール)は起壊死性抗がん剤、カルボプラチン(パラプラチン)は炎症性抗がん剤に分類されます。血管外漏出によって皮膚潰瘍や壊死を起こす可能性がありますので、投与時に痛みや腫れ、違和感などがないかよく観察してください。もし、血管外漏出を発見した場合には、直ちに点滴を止め、主治医に報告しましょう。
抜針の際には、できるだけルート内の薬剤を注射器で吸引してください。
投与後の注意点
治療から2~3日後に関節痛や筋肉痛が起こることがあります。疼痛時の対応について患者さんと確認しましょう。
また、1~2週間後に好中球減少が起こることが多いので、発熱時の対応について患者さんと確認しましょう。
治療コース数が増えるにつれ、しびれ(特に、手足)は増強してくることが多いです。ボタンがかけづらい、つまずきやすいなどの日常生活への支障が出るようであれば、早めに教えてもらうよう患者さんに伝えましょう。
また、ベバシズマブ(アバスチン)によって血圧が高くなることがありますので、自宅で血圧測定をするように指導しましょう。血痰や喀血などの症状があれば病院に連絡してもらうように説明しましょう。
カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法時の申し送り時のポイント
パクリタキセル(タキソール)によるアレルギー症状の有無を必ず伝えましょう。もし、症状があった場合には、どのような症状が出たのか、どのような処置を行ったかを伝えるようにしてください。また、現在のしびれの状態について評価し、必要があれば鎮痛剤などの使用について医師に相談しましょう。
ベバシズマブ(アバスチン)については、血圧の変動や出血傾向の有無などを伝えるようにしてください。
申し送り例
1サイクル目のカルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブを行った患者さんです。
前処置は、ジフェンヒドラミン、デキサメタゾン、ファモチジンで行い、アレルギー症状はありませんでした。もともとお酒が弱い方で、治療当日はかなり眠気が強かったようです。今後は外来で治療の予定ですが、来院時には自分で運転して来ないように説明しています。
経過中、10日目にGrade 3の好中球減少を認めましたが、発熱はありませんでした。急性期の嘔気・嘔吐はありませんでしたが、5日目にGrade 2の嘔気がありました。次コースからは、制吐剤が中等度催吐性のものから高度催吐性のものに変更になるようです。しびれは今のところありません。
血圧上昇などもありませんでしたが、自宅で測定していただくよう説明しています。15日目に鼻出血がありましたが、圧迫のみで止血できました。
カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法のポイントA
- パクリタキセルに対するアレルギー(過敏症状)は命に関わることがあります。前処置ができているかどうか、必ず確認しよう!
カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法のポイントB
- パクリタキセルはしびれが出やすいので、注意して観察しよう!
カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法時の看護記録に記載すべきこと
来院時の発熱の有無、食事・排便・睡眠の状況、特にしびれの有無などについて確認して記載しましょう。
前処置が行われたことの確認、抗がん剤投与中のアレルギー症状の有無、バイタルサイン(血圧や脈拍など)を必ず記載しましょう。また、血管穿刺部位の発赤や疼痛の有無についても確認の上、記載しておきましょう。
患者ケア・看護ケアはココを押さえる
カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法では、発熱性好中球減少症(FN)の頻度が比較的高く1)、発熱時の対応について患者さんに理解してもらうことは非常に重要です。発熱時には病院に問い合わせをして、予約外でも外来受診した方がよいのか確認するよう、患者さんに指導しましょう。
また、しびれは日常生活に与える影響が大きく、状況によっては抗がん剤の減薬や休薬が必要になる場合もあります。患者さんが困っていることについて医師にしっかりと伝え、内服薬の追加など、早期から治療介入してもらうようにしてください。
ベバシズマブ(アバスチン)には、喀血、消化管穿孔、血栓塞栓症など緊急で治療が必要となる副作用があります。そのような症状があった場合には、必ず病院に連絡するように説明しましょう。
脱毛の頻度も高いため、医療用ウイッグの情報提供や精神的なサポートなど適宜行うようにしましょう。
カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法のポイントC
- 好中球減少時の感染管理について患者さんに説明しよう!
- 第1話:『カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法(化学療法のポイント)/肺がん』
- ⇒『抗がん剤 A・B・C』の【総目次】を見る
[文 献]
[監 修]
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授
[編 集]
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科
[執 筆]
久保寿夫
岡山大学病院 腫瘍センター
*本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。