カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法(化学療法のポイント)/肺がん
この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、肺がん(肺癌)の患者さんに使用する抗がん剤「カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法」について、レジメンや副作用、治療成績について紹介します。
第2話:『カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法(看護・ケアのポイント)/肺がん』
久保寿夫
(岡山大学病院 腫瘍センター)
〈目次〉
- カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法は肺がんの患者さんに行う抗がん剤治療
- カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法で使用する薬剤
- カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法のレジメン
- カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法で使用する薬剤の投与方法
- カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法の代表的な副作用
- カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法の治療成績
カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法は肺がんの患者さんに行う抗がん剤治療
カルボプラチン+パクリタキセル療法とは、肺がんのうち非小細胞肺がんの患者さんに対してファーストライン(初回化学療法)の際に用いられる治療レジメンの一つです。血管新生阻害薬であるベバシズマブ(アバスチン)は、カルボプラチン(パラプラチン)+パクリタキセル(タキソール)と併用することで治療効果を増強することが報告されていますが、非小細胞肺がんのうち扁平上皮がんには用いることはできません。
パクリタキセルの成分や溶解補助剤が原因と考えられるアレルギーは命に関わることもあるため、予防するための前処置(ステロイドや、抗ヒスタミン薬など)が必須です。
カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法で使用する薬剤
カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法で使用する薬剤は、表1のとおりです。
表1カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法で使用する薬剤
カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法のレジメン
1日目(Day1)に、カルボプラチン(パラプラチン)、パクリタキセル(タキソール)、ベバシズマブ(アバスチン)を投与し、2~21日目は休薬します(表2)。
表2カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法のレジメン
カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法で使用する薬剤の投与方法(表3)
表3カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法の投与方法
memoカルボプラチン使用時に目にする「AUC」とは?
AUCとは、血中濃度曲線下面積、または薬物血中濃度-時間曲線下面積(Area Under the blood concentration time Curve)の略称で、利用できる薬の総量を表している指数です。
カルボプラチンの効果と副作用(特に血小板減少)を見る際には、「体表面積あたり」で計算する投与量よりも、「AUC」に相互関係があることが知られています。
覚えて欲しいポイントは、AUCの値は腎機能によって大きく影響されるので、患者さんの腎機能の程度によって薬剤の投与量を調節する必要があります。その際の計算方法としてAUCが使用されるという点です。
カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法の代表的な副作用
まず、早期に起こる副作用として、アレルギー症状があります。初回投与時とは限らず、2回目以降の点滴のときにも起こり得るので注意が必要です。前処置ができているか、必ず確認しましょう。
その他、嘔気や嘔吐、関節痛や筋肉痛、骨髄抑制(特に白血球・好中球)、発熱性好中球減少症(FN)、脱毛、手足のしびれなどがあります。
ベバシズマブ(アバスチン)の副作用として、高血圧、蛋白尿、出血傾向(鼻出血、血痰、喀血)、血栓塞栓症、消化管穿孔、創傷治癒遅延などがあります。特に、喀血や血栓塞栓症、消化管穿孔などは命に関わりますので、緊急で治療が必要になります。
カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法のポイントA
- パクリタキセルに対するアレルギー(過敏症状)は命に関わることがあります。前処置ができているかどうか、必ず確認しよう!
カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法のポイントB
- パクリタキセルはしびれが出やすいので、注意して観察しよう!
カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法のポイントC
- 好中球減少時の感染管理について患者さんに説明しよう!
カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法の治療成績
進行または再発非扁平上皮非小細胞肺がんに対するカルボプラチン+パクリタキセル療法の治療成績は、無増悪生存期間が4.5ヶ月、全生存期間が10.3ヶ月、奏効率が15%であったのに対し、ベバシズマブ(アバスチン)を加えることで無増悪生存期間が6.2ヶ月、全生存期間が12.3ヶ月、奏効率が35%とそれぞれ上乗せ効果を認めました。
有害事象としては、ベバシズマブ(アバスチン)を加えることでGrade 4の好中球減少が16.8%から25.5%に増加し、発熱性好中球減少症(FN)が2%から5.2%に増加しています1)。
memoがんの治療成績でよくみる奏効率とは?
奏効率とは、治療によってすべての腫瘍が消失する「完全奏効(CR;complete response)」と、ある一定の割合以上に縮小する「部分奏効(PR;partial response)」の確率を合わせたものです。つまり、「奏効率=CR+PR」です。
例えば、奏効率80%の治療というのは、「80%の確率で腫瘍が縮小、もしくは消失する治療」ということになります。
また、最近、「病勢コントロール率」という言葉をよく耳にします。これは、奏効率に腫瘍が増大しない「不変(SD;stable disease)」の確率を合わせたものです。つまり、「病勢コントロール率=CR+PR+SD」です。
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[文 献]
[監 修]
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授
[編 集]
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科
[執 筆]
久保寿夫
岡山大学病院 腫瘍センター
*本連載では、薬剤の厳密な指示・副作用・投与スケジュールなどについて記載されていますが、これらは2017年5月時点のもので、変更される可能性がございます。薬剤の使用にあたっては、製品に添付されている最新の情報を十分にご参照ください。
*本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。