発熱はどうして起きるの?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は発熱のメカニズムについて説明します。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
発熱はどうして起きるの?
発熱を起こす原因は、機械的刺激、あるいは化学的刺激によって体温調節中枢の設定温度(セットポイント)が上昇することです。ほとんどの場合、細菌のもつ発熱物質、マクロファージが作り出す発熱物質などの化学的刺激が原因になります(図1)。
図1発熱による機能障害
風邪のような感染症では、これらの発熱物質によって本来の深部体温設定温度(セットポイント)の37°Cよりも高い水準に設定温度が移されます。たとえば、設定温度が40°Cに設定されると、体温調節中枢は40°Cになるまで体温を上昇させる指令を出し続けます。
発熱時に震えや悪寒がするのは、できるだけ早く体温を上げるために筋が運動しているからです。
しかし、いくら発熱物質が放出されるといっても、生体には恒常性を維持する機能が備わっています。発熱が不必要であればほかの機能が働き、体温を一定に保つはずです。そうしないのは、体温の上昇が必要だと生体が判断したからです。
体温が上昇することのメリットの1つに、ウイルスの活動の抑制があります。ウイルスは約37°Cで最も増殖が活発になりますが、39°Cの環境ではほとんど増殖できなくなります。
MEMO1発熱の分類
熱の高さにより、微熱(37°C以上、37.5°C未満)、中程度の発熱(37.5°C以上、38.5°C未満)、高熱(38.5°C以上)に分類されます。熱型では、稽留熱(けいりゅうねつ、1日の日差が1°C以内で高熱が持続)、弛張熱(しちょうねつ、日差が1°C以上で、解熱時も平熱にならない)、間欠熱(日差が1°C以上で、平熱になる時間がある)に分けられます。
MEMO2解熱
発熱物質の刺激が抑制されることで、体温調節中枢の体温の設定温度(セットポイント)が基準値に戻り、これによって解熱します。それまで高いセットポイントに順応していた身体を、設定温度が低くなる(解熱)のに合わせ、体温を下げるために、皮膚血管を拡張して放熱を促したり、発汗による熱放散を促進します。
発熱によって起こる体の変化
発熱すると代謝が亢進します。体温が1°C上昇すると代謝が13%増加し、熱感、発汗、倦怠感などが生じます。また、代謝の亢進に伴って各組織で酸素や栄養分が必要とされ、それを供給するために心拍数が増加し、血流速度も上昇します。
熱をつくり出すために酸素が必要になるため、呼吸数は多くなります。反対に血圧は低くなりますが、これは熱を放散させるために血管が拡張するからです。
発熱の影響は消化機能にまで及びます。食欲不振や悪心・嘔吐、下痢などの症状が現れ、発熱によって水分が失われるため、脱水や便秘を起こしやすくなります。
また、発熱によって頭痛、めまい、悪心、嘔吐、せん妄などが起きやすいのは、中枢神経の機能障害によるものです。
※編集部注※
当記事は、2019年5月13日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック 第2版』 (監修)山田幸宏/2023年8月刊行/ サイオ出版