NSAIDsを続けて使う場合、種類を変更したほうがいい?
『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「NSAIDsの連続使用」に関するQ&Aです。
佐々木剛
大阪市立総合医療センター薬剤部担当係長
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長
NSAIDsを続けて使う場合、種類を変更したほうがいい?
作用機序の異なる鎮痛薬を組み合わせることにより、効果を上げたり、副作用を低減させることができます
〈目次〉
NSAIDsを続けて使う場合、種類を変更したほうが良い根拠は?
NSAIDsには多くの種類があり、効果の強さ、血中半減期の長さ、副作用などにそれぞれ違いがあります。また、副作用の軽減や速効性、長時間の効果持続といった目的で注射薬や坐薬などが開発されています。
化学構造別に分類すると、アリール酢酸系(ボルタレンⓇ など)、オキシカム系(フルカムⓇなど)のNSAIDsは一般に効果が強く、プロピオン酸系(ロキソニンⓇなど)は、これらに比べるとやや弱いです。アントラニル酸系のメフェナム酸(ポンタールⓇなど)は特に鎮痛効果が強くなっています。
半減期の長さによってNSAIDsの使い分けも重要
急性疾患や慢性疾患の急性増悪期には、半減期の短いものが適し、慢性に経過する疾患には半減期の長いものが適しています。
半減期の長いものは、1日に1~2回投与なので、胃の直接刺激も低減されます。しかし、半減期の長い薬剤は、体から代謝されて排泄されるまでに時間がかかるため、副作用が出たときにすぐに対応できず、回復に時間がかかり重篤になる場合があります。
したがって、肝機能や腎機能の低下した患者や高齢者には投与しないほうが安全です。
DDS(drugdeliverysystem:薬物を必要な箇所に効率よく配送するシステム)による分類を表1に示します。
胃腸障害を低減するために、坐薬やプロドラッグ(吸収前は活性がなく、吸収されてから代謝され効果が出る薬剤)も効果がありますが、副作用は完全には抑えることができないので、注意が必要です。
表1NSAIDs のDDS(drug delivery system)による分類
ロピオンⓇという静注薬のNSAIDsもあります。投与後はすぐに血中に入るので、効果発現が早く、経口摂取不可の人でも投与できるのが利点ですが、経口薬と鎮痛効果と副作用は差がないのと、投与後に、除痛されることによって、それまで痛み刺激によって亢進していた交感神経や下垂体-副腎系の内分泌反応が減弱し、血圧や心拍数が低下することがあるため注意が必要です。
NSAIDsに限らず、鎮痛薬を静脈内投与する際は、バイタルサイン、痛みを含めた患者の症状の変化には、十分注意する必要があります。
副作用が出た場合は変更も検討
効果および副作用の発現には、個人差が存在し、各分類のNSAIDsの薬理作用や副作用はある程度類似していますので、効果が弱い場合や副作用が出た場合は、違う分類に属するNSAIDsへの変更を検討します。
NSAIDs同士の併用は、たとえ経口薬と坐薬であっても効果は増さずに副作用ばかりが増強するので注意が必要です。
近年、術後疼痛管理を行ううえでmultimodalanalgesia(多角的鎮痛)という概念が提唱されています(図1)。
NSAIDs単独では、鎮痛作用はそれほど強くないため、質の高い鎮痛を実現するために作用機序の異なる薬剤(NSAIDs、オピオイド、ケタミン塩酸塩、局所麻酔薬)を組み合わせて投与し、相乗的な鎮痛効果を得つつそれぞれの投与量を減らすことができるため、副作用を軽減して患者の満足度を高める方法があります。
1つの鎮痛薬の投与量を増加させて鎮痛を図るよりも、個々の鎮痛薬は少量で、同等かそれ以上の鎮痛効果を得ることができます。その結果、オピオイドによる鎮静、悪心・嘔吐、呼吸抑制、局所麻酔薬の硬膜外投与による血圧低下、下肢の筋力低下、といった各鎮痛薬の副作用の頻度を減らすことができるメリットがあります。
同じ薬を多量に使ったり、頻回に使うのは危険なのですね。
ポイントは、鎮痛薬は作用機序の異なるものを 組み合わせて使うのが副作用対策にもいいということだね。
[文献]
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社