NSAIDsは、一度使うと次は6時間空けてと聞くけれど、その根拠は?

『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「NSAIDsの使用間隔」に関するQ&Aです。

 

佐々木剛
大阪市立総合医療センター薬剤部担当係長
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長

 

NSAIDsは、一度使うと次は6時間空けてと聞くけれど、その根拠は?

 

間隔を狭めて、決められた用量以上使っても効果は上がらず、副作用のリスクが上がります。

 

〈目次〉

 

NSAIDsの効果は6時間は持続する

「6~8時間空けて」とは、一般的にロキソプロフェンナトリウム水和物やジクロフェナクナトリウムなどの半減期の短い1日3回服用するNSAIDsでいわれます。

 

例えば、ボルタレン錠の添付文書には、手術ならびに抜歯後の鎮痛・消炎には1日量75~100mg(3~4錠)を3回に分けて服用となっており、また頓服の場合は1回1~2錠となっています。

 

ボルタレン 錠のインタビューフォームには、鎮痛効果の発現時間は15~45分(平均26分)、鎮痛効果の持続時間は6~10時間(平均8時間前後)との記載があります。

 

つまり、効果は少なくとも6時間は持続しています。NSAIDsはモルヒネと違い、天井効果がありますので、量を増やしても副作用が増えるだけで、効果は上がりません。したがって、6時間以上空けるのが妥当だと思われます。

 

消化性潰瘍診療ガイドラインでも、「NSAIDs潰瘍の発生率はNSAIDsの投与量に依存するので高用量は避ける」とあります。NSAIDsによる消化管障害は、用量依存型によるものです。

 

NSAIDsはどのように使う?

1.頓服の場合

頓服の場合でも、少なくとも3~4時間は空けるようにします。

 

3~4時間間隔で使う場合も、使う総量は通常使う量と同じにする必要があります。

 

消化性潰瘍などの副作用のリスクを考えると、1日の使用量は添付文書に記載の用量までにすることがよいでしょう。

 

常に持続的な除痛効果を得るためには、できるだけ一定の血中濃度レベルを維持することが重要となりますので、NSAIDsの血中半減期(表1)を考慮して、1日の服薬の時間間隔を設定する必要があります。

 

表1主なNSAIDs の血中半減期

主なNSAIDs の血中半減期

 

星恵子:内科領域におけるNSAIDs の使用法と注意点. モダンフィジシャン 2012;11:1355-1358. より許諾を得て改変し転載

 

2.定期投与の場合

通常1日3回の定期投与であれば、24時間を1日3回で分割し、8時間ごとの投与が理想といえます。

 

がん疼痛など、痛みや炎症の原因となるプロスタグランジン(PG)の合成が持続的に起こっている状態を抑えるためには、24時間持続的にNSAIDsの効果を持続させなければなりません。実際の投与としては、1日3回投与のNSAIDsを朝食後(7~8時)、昼食後(12時)、夕食後(17~18時)に投与すると、夕食後から朝食後までに12時間の間隔が空いてしまい、夜間のナースコールのかかる理由の1つになってしまいます。朝食後、昼(14~16時)、寝る前の投与によって、夜から朝にかけて効果が切れることを抑えることができます。

 

またNSAIDsの種類により消化器系の副作用があるので、消化性潰瘍のリスクがある患者には、消化性潰瘍・胃炎予防薬は投与をしておくほうがよいでしょう。

 

NSAIDsの使用量、投与回数は、薬物の消失半減期などをもとに設定されていますので、添付文書の用法・用量の範囲で投与することが大切です。

 


[文献]

  • (1)日本消化器学会編:消化性潰瘍診療ガイドライン.南江堂,東京,2009.
  • (2)星恵子:内科領域におけるNSAIDsの使用法と注意点.モダンフィジシャン2012;11:1355-1358.
  • (3)細川豊史:NSAIDs.がん疼痛管理におけるアセトアミノフェンとNSAIDsの役割・位置づけ,薬局2012;63:2287-2291.
  • (4)大阪府病院薬剤師会編:困ったときのくすりのQ&A.薬事日報社,東京,2003:82-83.
  • (5)ボルタレン錠ノバルティスファーマインタビューフォーム

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社

SNSシェア

看護ケアトップへ