肝臓が化学工場と呼ばれるのはなぜ?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は肝臓の機能に関するQ&Aです。
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山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
肝臓が化学工場とよばれるのはなぜ?
肝臓には、栄養素の代謝と貯蔵、薬物や中毒性物質の解毒・分解・排泄、血液機能の調節、胆汁の分泌、生体防御など、多くの機能が備わっています。こうした機能のほとんどは、物質の化学的な反応によって行われています。
肝臓が化学工場とよばれるのは、身体を維持するための多くの化学反応が行われているからです。これらの機能のうち、1つでも支障が生じると、身体のさまざまなところに影響が現れてきます。肝臓の主な機能は次のとおりです。
栄養素の代謝と貯蔵
小腸で吸収されたグルコースからグリコーゲンをつくり、肝臓内に蓄えます。血液中のグルコースが不足すると、グリコーゲンをグルコースに分解して血液中に送り出します。また、タンパク質を合成したり、不要なアミノ酸を分解して尿素として尿中に排泄します。さらに、脂肪酸の分解、コレステロールの生成なども行っています。
薬物や毒素の解毒、分解、排泄
経口摂取された薬物や毒素は、最終的に肝臓に運ばれて解毒され、尿とともに排泄されます。解毒は、肝内血管の類洞(洞様毛細血管)に存在するクッパー細胞による貪食(どんしょく)作用と、酵素による化学的分解によって行われます。
血液機能の調節
肝臓は血液を貯蔵し、必要に応じて放出する役割を担っています。また、鉄を貯蔵・再利用したり(鉄代謝)、ビリルビンとして胆汁中に排泄します(ビリルビン代謝)。肝臓ではフィブリノゲンやプロトロンビンなどの血液凝固物質の生成も行っています。
胆汁の生成と分泌
胆汁は肝細胞によって生成されます。胆汁は、毛細胆管→肝内胆管枝→肝内胆管→総胆管という順に流れ込み、十二指腸に分泌されます。
生体防御作用
肝臓に存在するリンパ球やクッパー細胞は、生体防御に働きます。
※編集部注※
当記事は、2016年12月22日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版