ウィーニング中の患者の観察ポイントは?|人工呼吸ケア

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「ウィーニング中の観察ポイント」に関するQ&Aです。

 

奥田晃久
東京慈恵会医科大学附属病院臨床工学部

 

ウィーニング中の患者の観察ポイントは?

 

患者のバイタルサインや循環動態(呼吸回数、SpO血圧心拍数心電図)、意識状態、呼吸負荷の有無(努力性呼吸になっていないか)を観察します。

 

〈目次〉

 

ウィーニング中の「呼吸負荷の有無」の見方

  • 異常な呼吸パターン(頻呼吸、多呼吸、徐呼吸、少呼吸)ではないか、緊急性の高い呼吸状態(陥没呼吸、シーソー呼吸、翼呼吸:表1)ではないか観察する。

表1特殊な呼吸状態

 

鼻翼呼吸 重篤な呼吸不全
  • 鼻から強く吸うと鼻翼根部が収縮
  • 咽頭を下に大きく動かすように呼吸する
下顎呼吸 重篤な呼吸不全
死亡直前
  • 口、下顎をパクパクして気道を広げ、空気を取り込み用に呼吸する
起座呼吸 左心不全
重症喘息発作
  • 仰臥位だと苦しいので座っている
陥没呼吸 突発性呼吸窮迫症候群(IRDS)
  • 吸気時の胸骨部の陥没
  • 上気道閉塞
  • 胸壁が未熟な新生児や未熟児の呼吸障害
シーソー呼吸 重篤な呼吸不全
  • 胸部と腹部がシーソーのように逆位で動く

 

  • 呼吸困難が生じ、努力性呼吸になると呼吸補助筋が使用されるため、吸気時には胸鎖乳突筋、前・中・後斜角筋、上後鋸筋などの筋肉が、呼気時には内肋間筋、腹直筋、内・外腹斜筋、腹横筋、下後鋸筋が使われていないか観察する。
  • 努力性呼吸が継続すると、胸鎖乳突筋などの呼吸補助筋は高度に緊張する(図1)。

図1胸鎖乳突筋の緊張

胸鎖乳突筋の緊張

 

呼吸時に胸鎖乳突筋を使用している状態は、呼吸時に強い負荷がかかっていると考えられる

 

ウィーニング中のバイタルサインのチェックポイント

  • 呼吸回数の上昇、SpOの低下、血圧の上昇・低下、心拍数の上昇・低下、不整脈の有無などのバイタルサインを観察する。
  • 不穏や不安状態でないか観察する。
  • 末梢の冷感、冷汗の出現がないか観察する。
  • SBT(自発呼吸トライアル)開始30分間は、特にバイタルサインの変化に注意し観察する。
  • SBTが失敗する患者は、SBT開始後30分の間に呼吸回数・心拍数・血圧の上昇と、動脈血酸素飽和度が低下するという報告がある(1)

 

COLUMN呼吸筋と呼吸補助筋って?

正常の呼吸運動は、呼吸筋(横隔膜と肋間筋)によって行われる。

 

呼吸補助筋は、呼吸筋だけでは十分な換気を得られないときに使用される筋である。呼吸補助筋を使用する呼吸は効率が悪いため、多くのエネルギーを使用する。したがって、酸素消費量が増加し、それを補うためにさらに呼吸補助筋の活動が活発化するなど悪循環に陥る。

 

つまり、呼吸補助筋を使用した呼吸は「努力性呼吸」であり、呼吸困難の重要な徴候となるのである。

 

(道又元裕)

 

略語

 

  • SpO(pulse-oxymetric oxygen):経皮的動脈血酸素飽和度
  • SBT(spoutaneous breathing trial):自発呼吸トライアル
  • IRDS(infant respiratong distress syndrome):突発性呼吸窮迫症候群

 


[引用・参考文献]

 

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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