尿量が変化する原因は何?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は「尿量の変化」に関するQ&Aです。
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山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
尿量が変化する原因は何?
身体に取り入れる水分量と排泄量は、飲食・飲水によって一定のバランスが保たれています。飲水量が減ると血液循環量が減少するため、排泄量も減ります。
また、発汗や下痢、嘔吐、大量出血、広範囲の熱傷など、尿路以外からの排泄量が多くなると、同様に血液循環量が減少するため、尿量は減少します。逆に、飲水量が増えると、血液循環量が増加するため尿量が増加します。
尿量は脳障害、腎臓障害、代謝障害、心臓障害などによっても変化します。脳腫瘍や頭部外傷などによって下垂体後葉が障害されると、抗利尿ホルモンADHの分泌が抑制され、尿の濃縮力が低下して尿量が増加します。
ネフロンが破壊されることで起きる急性腎不全では、一時的に尿量が減少しますが、残されたネフロンの過重負荷のために尿量はかなり回復します。その量については、どの程度のネフロンが残っているかによります。
糖尿病などの代謝異常が起きた場合も、尿量が増加します。これは多量のグルコースが糸球体で濾過されるために尿細管の浸透圧が上がり、ナトリウムや水の再吸収が抑制されるからです。
心不全などによって心機能が低下したり、出血量が多くなって体内の循環血液量が減ると、腎臓への血流量も減るために尿量が減少します。また、前立腺肥大症や前立腺癌、結石などによって尿道が狭くなると、1回の尿量が少なくなり、頻尿になります。また、これらの症状が進んで尿道が閉塞されると、尿は全く出なくなります(尿閉)。
※編集部注※
当記事は、2016年11月24日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版