加齢と腎機能は関係があるの?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は「加齢と腎機能の関係」に関するQ&Aです。
[前回]
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
加齢と腎機能は関係があるの?
加齢とともに糸球体は硬化し、濾過機能が低下した糸球体が徐々に増えます。また、原尿を再吸収する尿細管の細胞膜が肥厚したり、尿細管の間質が線維化するなどの形態的な変化も現れます。毛細血管には動脈硬化が起こります。
腎臓は予備力がある臓器ですから、障害されている部分が小さければ、障害されていない部分が補うことで腎機能は保たれます。
しかし、障害が進むと腎臓の血流量が減り、糸球体での濾過能力が低下するだけでなく、尿の濃縮力も低下していきます。高齢者が多尿、頻尿になるのは、加齢によって腎機能が低下するためです。
MEMO頻尿
通常、1日に8〜10回以上排尿するような場合を頻尿と呼びます。
COLUMNネフローゼ症候群とタンパク質制限
糸球体に障害が起こり、大量のタンパク質が尿に出てしまう疾患をネフローゼ症候群といいます。タンパク尿、低タンパク血症、浮腫、脂質異常症の4つが典型的な症状です。
ネフローゼ症候群では、以前はタンパク質制限食厳守でしたが、最近ではその症状により、制限が緩やかになっています。ネフローゼ症候群のときにタンパク質の摂取を制限するのは、次の理由からです。
身体のタンパク質はもともと肝臓でつくられていますが、ネフローゼ症候群では、そのタンパク質が腎臓から出て行ってタンパク質が足りなくなってしまいます。そこで肝臓では、次々にタンパク質をつくろうと無理を重ねます。そのときにタンパク質の製造と一緒に中性脂肪がつくられたり、アンモニアの分解が滞ったりします。
そのため、以前は肝臓に無理にタンパク質をつくらせないように、その材料としてのタンパク質の摂取を制限しました。しかし、最近では、タンパク質摂取制限による副作用を考慮し、厳しく制限しないようになってきています。
※編集部注※
当記事は、2016年11月21日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版