尿失禁が起こるのはなぜ?

『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回は尿失禁に関するQ&Aです。

 

江口正信
公立福生病院診療部部長

 

尿失禁が起こるのはなぜ?

 

加齢などによる尿道括約筋の機能低下、神経障害、過活動性膀胱、尿路感染、身体機能低下、認知症などさまざまな原因によって、自分の意思とは無関係に尿が漏れてしまう状態に陥るからです。

 

尿失禁の原因と分類

尿失禁の原因は大きく分けて、①骨盤底筋群や靭帯の緩み、②骨盤内臓器の脱出、③神経障害(神経因性膀胱)によるものあげられます。

 

また尿失禁の分類は、上記の原因を含め以下のようになります。

 

腹圧性尿失禁

くしゃみをする時に生じる腹圧の上昇に対して、骨盤底筋群や靭帯が緩んだ状態ではこれに抵抗できず、尿が漏れてしまいます。これらが腹圧性尿失禁に相当し、加齢現象の1つの場合や、出産あるは肥満などが原因となります。とくに女性では尿道が短く、また前立腺がないことや括約筋の働きが男性にくらべ弱いことなどから尿失禁が起こりやすいと考えられます。

 

切迫性尿失禁

前ぶれのない急激な尿意の為、トイレに間に合わず尿失禁してしまう状態であり、以下の3つの原因が挙げられます。

 

神経障害によるもの(神経因性膀胱)
脊髄の腫瘍、炎症、外傷などによる損傷や、脳~脊髄へ至る経路の障害などが原因となり、脳からの信号(指令)に従う膀胱の働きが潤滑に行うことができなくなります。

 

不安定膀胱によるもの
神経障害などの明確な原因はないが、尿があまりたまらない状態でも膀胱が収縮し尿を漏らしてしまいます。常に尿意切迫感を有するものを過活動性膀胱と呼んでいます。

 

膀胱や尿道などの炎症・刺激によるもの
膀胱炎尿道炎、膀胱・尿道結石、膀胱癌などによって知覚神経が過敏な状態となり切迫性尿失禁を起こしてしまうもの。

 

溢流性尿失禁

前立腺肥大症、前立腺癌、尿道狭窄などの尿路の狭窄をきたす疾患では、排尿障害によって膀胱に貯留した尿が最終的に溢れ出す状態を示します。上記の排尿障害を基礎疾患として有しており、女性より男性に多くみられます。

 

機能性尿失禁

身体運動機能の低下や認知症による尿失禁であり、排尿機能自体には問題がなく、認知症の進行によって適切な状況での排尿行為が円滑に行われないことや、尿意が起こってからトイレに行くまで、身体機能の低下によって間に合わなくなってしまうことなどがあげられます。

 

⇒〔看護技術Q&A一覧〕を見る

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術』 (編著)江口正信/2015年3月刊行/ サイオ出版

SNSシェア

看護ケアトップへ