腎生検|腎・泌尿器系の検査

『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、腎生検について解説します。

 

高木 康
昭和大学医学部教授

 

〈目次〉

腎生検とはどんな検査か

生検の方法には大きく分けて2つある。

 

1つは病棟や病室において、超音波ガイド下で経皮的に腎組織を穿刺・採取する方法で、もう1つは手術室において全身麻酔下で腹部を切開して行う開放腎生検である。どちらも腎臓の組織を一部採取し、病理学的検査を行う。

 

通常は前者で行うが、開放腎生検は、超音波ガイド下では合併症の危険性が高い場合(片腎;片方の腎臓の著しい機能低下または無機能腎)や極度の肥満のため生検針が届かない場合に行われる。開放腎生検には、開腹して行うものと腹部を少し切開し、腹腔鏡下で行うものがある。

 

腎生検の目的

腎疾患の正確な組織診断、病態の進行状況および予後の予測、治療方針の確定を行う。

 

 

腎生検の実際(方法)

処置室の準備

  1. 処置用ベッドに腰枕を置き、その上に処置用シーツを敷く。
  2. 超音波を準備する。通常、左を生検することが多いため、患者の左側に準備する。
  3. 生検針などの必要物品を準備する(詳細は後述)。

 

患者の準備

  1. 処置用ベッドに腹臥位に寝かせる。
  2. 上半身の病衣を胸部の位置まで開け、穿刺部位を露出する。
  3. 腰枕は腎臓の固定のため、腹部の下に置く。

 

実施と介助

  1. 医師は超音波で腎臓の位置を確認し、患者に付いた超音波用ゼリーを拭き取った後、マジックなどで穿刺部位に印をする。
  2. 超音波のプローベを消毒する。または専用の滅菌ビニールをプローベにかぶせる。
  3. 穿刺部位を広範囲に消毒する。
  4. 医師に滅菌手袋を渡す。
  5. 滅菌穴あき布片を用い、穿刺部以外を布片で覆う。無菌操作で必要物品を医師に渡す。
  6. 注射器、針を渡し、局所麻酔を準備する。
  7. 医師が超音波を当て、局所麻酔後、生検針で穿刺する。
    ※ リドカインショックなどの過敏反応の観察を行う。
  8. テ患者に深呼吸を促し、大きく息を吸い込んだところで息を止め、1回目の穿刺し、生検を行う。
  9. 抜去したら、5分程度圧迫止血を行う。
  10. 採取した検体をホルマリン瓶に入れる。
  11. 同様の方法で2回目の穿刺、生検を行う。
  12. 生検が終了したらガーゼを当て約10分間圧迫止血する。
  13. 止血を確認し、ガーゼを当て絆創膏(幅広で伸縮性のあるもの)で圧迫固定し、砂嚢を当て腹帯を巻く。
  14. 衣服を整え仰臥位にし、患者をストレッチャーに移す。
  15. 患者のベッドへの移動は、数人で静かに水平移動させる。
  16. バイタル測定、一般状態の観察を行う。

 

腎生検前後の看護の手順

検査前

1)患者への説明

  • 医師からの説明後、患者の不安や疑問を傾聴する。
  • 患者への検査前の処置、検査後の安静度について説明する。

 

2)検査前後の処置の確認、必要物品の準備を行う。

  • 出血時間凝固時間、プロトロンビン時間の確認をする。
  • 患者は検査時、20~30 秒程度呼吸を止める必要があるため、息止めの練習を行う。
  • 検査後、床上安静になるため、適宜、床上排泄訓練を行っておく。
  • 検査前日に体毛の多い患者の場合は、側腹部~腰背部の範囲を除毛する。
  • 検査前一食を絶飲食とする。
  • 薬の内服は、医師の指示を確認する。
  • 検査前に止血剤入りの点滴を開始する。(翌日まで持続する)

表1腎生検チェックリスト(昭和大学病院使用例)

腎生検チェックリスト(昭和大学病院使用例)

 

準備するもの

・医師の指示により輸液(維持液+止血剤)抗菌薬
・輸液ルート ・輸液スタンド ・超音波診断装置
・生検針14 ~ 18 G:2 本 ・バイオプシーガン 
・処置用シーツ ・滅菌ガウン ・滅菌手袋 
鑷子 ・綿球 ・消毒 ・ガーゼ 
・絆創膏(幅広で伸縮性のあるもの) 
・注射器(10mL)23G ・注射針滅菌穴開き布片
・滅菌布片
・局所麻酔薬(1 % リドカイン注射液10 mL)
・腹帯 ・腰枕 ・砂嚢500 g 
・横シーツ(患者搬送時に使用) 
・標本用ホルマリンおよび容器 ・マジック 
・救急カート

 

検査後の安静

  • 検査後4時間は、腰部の屈曲やひねる動作を禁止し、仰臥位で絶対安静となる。
  • 4時間後、医師が診察し、砂嚢の除去とベッドの頭側挙上が可能となる。
  • 6時間後、医師が診察し、穿刺部の圧迫を解除して歩行可能となる。
  • 飲食は、問題なければ検査の1時間後より可となる。
    ※ 安静時間は、18G生検針を使用した場合であり、それより太い針使用した場合や出血傾向のある患者の場合は、安静時間が変更される。
    ※ 検査後から3回目までの排尿は、時間、量、比重、ウロスティックでヘマテストを行い、血尿の有無を観察する。

 

腎生検において注意すべきこと

検査前

1)適応

  • 1日0.3~0.5g以上の蛋白尿
  • 浮腫と多量の蛋白尿がある
  • 原因不明の腎臓機能障害があり、画像検査で腎萎縮がない
  • 血尿の持続があり、進行する腎炎が疑われる 
  • 急速に腎機能が低下している
  • 急速進行性腎炎が疑われる

 

2)禁忌

  • 腎梗塞
  • 動脈瘤
  • 腎膿瘍
  • 腎周囲炎
  • 片腎
  • 水腎症
  • 多発性嚢胞腎
  • コントロール不良の出血傾向、高血圧により止血困難である 
  • 腎機能低下による腎萎縮
  • 呼吸停止が30秒間できない
  • 腎生検後の安静が保てない、または協力が得られない

 

3)慎重に行う場合

 

検査中

  • 生検時は、刺入時に動くと生検に失敗することがあるので、息止めをした時、圧迫感や痛みを感じても動かないよう説明を行い、協力を得る。
  • 検査時声かけを行い不安の緩和に努める。
  • 痛い時は、体を動かさず手で合図するなど合図を決めておく。

 

検査後の管理

  • 検査前および検査直後、1時間後、3時間後、6時間後にバイタル測定を行う。
  • バイタルサインなどの観察は検査1日目、2日目にも1日3回程度実施する。
  • 検査後、腹痛がある場合、腹腔内出血が疑われるため、バイタル測定、一般状態の観察を行い医師へ報告する。
  • 検査後、患者が安静を守れるよう十分な説明を行い、安静に伴う腰痛などの苦痛の緩和に努める。
  • 凝血による尿管閉塞を予防するため、検査後は飲水を促す。
  • 検査翌日、医師の診察後、点滴は終了となる。
  • 検査翌日、穿刺部位を絆創膏で保護してのシャワー浴は可能となり、入浴は検査後4~5日経過をみる。
  • 退院は検査3日目に可能となる。
  • 退院後2週間は、腹圧をかける動作(重い荷物を持つなど)や捻る動作、運動は避ける。

 

合併症

  • 腎生検後には、腎臓の周囲に多少の出血が認められる。
  • 血腫形成、止まらない血尿:止血剤の使用をするが、まれに輸血や外科的処置が必要になることもある。
  • 腎動静脈瘻:経尿道的な処置や外科的処置が必要になることがある。
  • 他臓器への損傷:外科的処置が必要となることがある。
  • 腎周囲感染:抗菌剤での対応をする。
  • 迷走神経反射:血圧低下、気分不快が起こることがあるが、過度の緊張によるものである。
  • 麻酔薬や抗菌剤などに対するアレルギー

 

腎生検に関する患者との問答例

これから検査します。排尿を済ませて処置室に来てください。

 

痛くないですか。

 

麻酔の注射をしますので痛みは、あまり感じませんが圧迫されるような感じはあります。
麻酔の注射をする時にチクッとした痛みがある程度です。

 

わかりました。

 

腎臓に針を刺すので、検査中は体を動かさないようにしてください。

 

じっとしていられるか心配です。

 

体を横から支えていますので、安心してください。
そのつど行っていくことは声をかけていきます。

 

気分が悪くなったらどうしよう。

 

気分が悪い時は、すぐに申し出てください。言いたいことがある場合は右手を動かしてください。

 

わかりました。頑張ります。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版

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