ICG試験|消化器系の検査
『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、ICG試験について解説します。
高木 康
昭和大学医学部教授
〈目次〉
ICG試験とはどんな検査か
インドシアニン・グリーン(ICG)試験は色素負荷試験の1つで、肝臓の解毒能力(異物を処理する能力)を把握する検査である。
経静脈的色素負荷後、15分後の血中残存率から肝の色素排泄機能を評価する。静脈注射されたICGは肝臓のみ選択的に取り込まれ(肝外排泄なし)、胆汁中に排泄される。肝血流量と肝細胞の色素取り込み能力が低下している場合、ICGが肝臓に取り込まれず、血液中に残存する。
ICG注射15分後に血中に残っているICGの割合を「15分停滞率(ICG-R15)」と呼ぶ。肝硬変などの障害肝では、ICGを取り込む能力が低下しているため、結果、ICG-R15は高値を示す。
ICG試験は、①有効肝血流量、②肝細胞の色素摂取・排泄能力が反映され、肝の総合的機能の検査として高く評価される。ICG値として、算出方法により15分停滞率(ICG-R15)のほかに、血中消失率(K値)が用いられる。15分停滞率(ICG-R15)と血中消失率(K値)は極めて相関性が高い。
ICG試験の目的
- 慢性肝障害の進展度診断。
- 肝がんの手術治療方針の決定(手術適応・許容肝切除範囲)。
- 術後の肝機能の把握。
評価方法と基準値
- 血中停滞率(ICG-R15) 基準値:10%以下
- 血中消失率(K値) 基準値:0.18-0.20
- 最大除去率(Rmax):通常0.5mg/kgと5mg/kgの2つの濃度でICG試験を行い、そのK値より算定する。
基準値:3.18±1.62mg/kg/分
1.0以上が肝切除術の適応となる。
肝線維化に伴いICG-R15は高値を示す。慢性日活動性肝炎から肝硬変への進展に伴いICG-R15は上昇。
値の目安としてICG-R15が20%以上では、慢性活動性肝炎を考慮し、30%以上、K値が0.05以下を示す場合は肝硬変の可能性が高いと判断する。35%以上では非代償性肝硬変の状態と判断する(表1)。
ICG試験の実際
ICG検査前は運動による肝血流量の変化を避けるため、原則として早朝空腹時に以下の手順で検査を行う。
必要物品
・ジアグノグリーン(ICG)試薬・10mLシリンジ・18G針(溶解用)・翼状針
【血管確保用】
・駆血帯・皮膚用消毒綿(アルコール綿など)・20~22G留置針・三方活栓・三方活栓キャップ・ヘパリン生食液・固定用テープ・針捨てボックス
【採血用】
・検体容器(分離剤入り生化学)4本・ストップウォッチまたはタイマー・2mLシリンジ
ICG試験前後の看護の手順
- ①朝食が禁食になっているか確認をする。
- ②空腹時の体重測定をする。
- ③指示の再確認をし、必要物品を準備する。
・検査前の採血用検体容器1本
・体重1㎏あたり0.5㎎(0.1mL)のジアグノグリーン試薬を注射器に吸ったもの
※1つのトレイに、1回分の必要物品を入れる。 - ④患者にフルネーム、誕生日を名乗ってもらい、氏名と誕生日の確認をカルテで行う。
- ⑤医師より検査について説明されているか確認する。
- ⑥検査前に排尿を済ませてもらう。
- ⑦検査手順を説明し、バイタルサインを測定する。
- ⑧患者に楽な姿勢をとってもらい(臥位)採血前30分安静臥床する。採血側の腕の下に処置用シーツを敷く。
- ⑨検査説明後、片腕に留置針挿入を行い、三方活栓を留置針に直接接続し、検査前の採血を行い、採血後ヘパリン生食液を注入する(図3)。
- ⑩留置した腕とは反対側の腕よりジアグノグリーン試薬をゆっくりと注入する(図4)。
注入終了後、タイマーまたはストップウォッチを予定時間にセットしスタートする。 - ⑪試薬注入時は、患者の全身状態を観察する。※ショック時はただちに注入を中止し、救命処置を行う。
- ⑫5分、10分、15分後の採血を行う。採血時⑨で注入したヘパリン生食液を2mL程度吸引後採血する。再度ヘパリン生食液を注入する。
指示により20分、30分、40分、50分、60分後も採血する場合もある(血中消失率測定、図5)。
※針はリキャップせず、針捨てボックスに捨てる。 - ⑬検査終了後バイタルサインの測定と全身状態の観察を行う。
- ⑭異常がないことを確認と、留置針を抜去して、刺入部を止血固定する。
- ⑮食事摂取可能であることを伝える。
ICG試験において注意すべきこと
高度肥満や多量の腹水がある患者では、そのままの体重量換算でICGを投与すると、肝重量や循環血液量に対して過剰投与になる可能性があるため、標準体重に換算したICG量を投与する必要がある。また、体位により肝血流量の変化を考慮して、安静・仰臥位にて検査を施行する。
ICG試験現場での患者との問答例
おはようございます。今日は肝臓の機能を調べるための採血の検査ですね。
いつもの採血とどう違うんでしたっけ?
すぐ終わるんですよね。
いつもは血液を採るだけですが、今日は試験薬の注射があります。
緑色の色素のお薬を注射して15分後にその色素が肝臓で排泄されて、血液の中での濃度がどれくらい減ったのかを測定します。色素の注射をする前の採血、色素の注射、注射の後の採血を3回
行います。その数値で肝臓の機能を調べます。
わかりました。じゃ、よろしくお願いします。
では、まず体重を測りましょう。
使用する試験薬の量を、○○さんの体重から、先生が計算して決めますので。体重を測った後はベッド上で安静にしていてください。15〜20分くらいで検査はすべて終了します。
わかりました。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版